シニア期の犬と猫の免疫力を維持するために|寒い季節の体調変化と注意点
秋から冬にかけては、朝晩の冷え込みや空気の乾燥が進み、犬や猫の体にとって負担の大きい季節です。特にシニア期に入った犬や猫は、若いころと比べて体温調節や免疫の働きが弱くなっているため、ちょっとした環境の変化でも体調を崩しやすくなります。
「最近少し元気がない」「寝てばかりいる」「散歩に行きたがらない」などの小さな変化も、免疫力の低下を知らせるサインかもしれません。寒い季節を元気に乗り切るためには、日常のちょっとした工夫と_定期的な健康チェックが大切です。
今回は、寒い季節に起こりやすい犬や猫の体調トラブルや、免疫力を支える“生活環境”の工夫、健康診断の重要性などをご紹介します。
■目次
1.なぜシニア期の犬や猫は免疫力が落ちやすいの?
2.寒い季節に起こりやすい体調トラブルとそのサイン
3.免疫力を支える“生活環境”の工夫
4.“食事と栄養”で免疫力を底上げ
5.動物病院で行う“健康診断”と相談のすすめ
6.まとめ
なぜシニア期の犬や猫は免疫力が落ちやすいの?
シニア期になると、代謝が低下し、体温を一定に保つ力や免疫細胞の働きも弱まっていきます。さらに、気温差や乾燥といった季節要因に加え、寒さによる運動量の減少も免疫機能を低下させる一因です。
また、心臓病や腎臓病、関節炎などの持病を抱えている場合、体力の消耗が大きく、免疫機能の回復にも時間がかかります。こうした状態では、風邪や皮膚炎、口内炎などの症状が悪化しやすく、治りも遅くなる傾向があります。
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つまり、シニア期の体は外からの刺激に対して“守る力”が弱くなっているため、免疫力を維持するためのサポートが欠かせないのです。
寒い季節に起こりやすい体調トラブルとそのサイン
秋や冬に見られる代表的な体調不良には、主に以下が挙げられます。
・冷えからくる関節の痛み
・呼吸器の不調(咳・鼻水・くしゃみ)
・皮膚の乾燥やかゆみ
・食欲の低下
これらの他に「毛艶が悪くなった」「水を飲む量が増えた」「動きが鈍くなった」などの変化も、免疫の低下や内臓の不調を示すことがあります。
もし、元気や食欲の低下、咳や鼻水などの症状が数日以上続くようであれば、早めに動物病院へ相談することが大切です。軽い体調不良と思っていたことが、実は病気の始まりだったというケースも少なくありません。
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免疫力を支える“生活環境”の工夫
シニア期の犬や猫が健やかに過ごすために、飼い主様は以下の工夫を行いましょう。
<室温管理>
冷えは免疫力を下げる大きな要因です。室内温度は犬では20〜23℃、猫では25℃前後を目安に保ちましょう。特に床からの冷気は体を冷やしやすいため、マットや毛布などを敷いて対策することが大切です。
<湿度管理>
湿度が40〜60%を下回ると、粘膜が乾燥してウイルスや細菌が体内に入りやすくなります。加湿器や濡れタオルを活用し、空気の乾燥を防ぐようにしましょう。
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<運動・散歩の工夫>
散歩は日中の暖かい時間帯に行うのがおすすめです。軽い運動を続けることで筋肉量を保ち、血流や代謝の維持に役立ちます。ただし、無理のない範囲で、継続的に体を動かすようにしましょう。
<寝床の工夫>
寝床は段差の少ない静かな場所に置き、やわらかいベッドや毛布で関節への負担を軽減しましょう。冷たい床に直接触れないようにすることで、体温の低下を防ぎ、安眠にもつながります。
“食事と栄養”で免疫力を底上げ
シニア期の犬や猫では、消化吸収の効率が低下するため、以下のような栄養バランスのとれた食事を意識することが大切です。
・オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)
・ビタミンEなどの抗酸化成分
・腸内環境を整えるβグルカン など
なお、食欲が落ちている場合は、フードを軽く温めて香りを立たせたり、ウェットタイプに変えたりするなどの工夫も効果的です。香りが強くなることで食欲を刺激し、摂取量を保ちやすくなります。
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また、「食べムラが続く」「体重が減ってきた」などの変化は、体の中で何かが起こっているサインかもしれません。食事量や便の状態などを記録しながら、異変を感じたら早めに動物病院に相談してください。
動物病院で行う“健康診断”と相談のすすめ
シニア期に入った犬や猫は、年に2回程の健康診断を受けることが大切です。血液検査や尿検査によって、臓器の働きや免疫機能の変化を早期に確認することで、病気の予防や早期発見につながります。
また、ワクチンやフィラリア予防なども、その子の体調や年齢に合わせて見直すことが大切です。
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さらに、当院では健康診断を通して得られたデータをもとに、その子に合った健康維持のプランをご提案しています。内科・外科の両面からサポートを行い、必要に応じて半導体レーザーによる低侵襲手術や、免疫細胞療法・幹細胞療法などの再生医療にも対応しています。これらの治療は、体が本来持つ「治る力」を生かし、負担をできるだけ少なくすることを目的としています。
季節の変わり目や寒い時期は、免疫力が下がりやすいタイミングでもあります。小さな体調の変化も見逃さず、健康診断や獣医師との相談を上手に活用しながら、愛犬や愛猫の健やかな毎日を守っていきましょう。
まとめ
シニア期は、病気を「治す」よりも「防ぐ」ことが健康寿命をのばす鍵になります。寒い季節こそ、日々の観察と生活環境の見直し、そして定期的な健康診断で、愛犬や愛猫の体調を守ってあげましょう。
当院では、飼い主様と一緒にその子に最も合ったケア方法を考え、安心してシニア期を過ごせるようサポートいたします。
「最近なんとなく元気がない」「体調の変化が気になる」など、少しでも不安を感じたら、お早めにご相談ください。季節の変わり目も、毎日を穏やかに過ごせるようお手伝いいたします。
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