つるまき動物病院
院長ブログ

シニア期の犬と猫の関節炎|寒い季節を快適に過ごすためにできることとは?

2025年11月18日

朝晩の気温がぐっと下がるようになると、愛犬や愛猫が散歩を嫌がったり、高いところに登らなくなったりしていませんか?こうした行動の変化は、関節の痛みや違和感が影響している可能性があります。

実は、秋冬の寒さは関節炎(変形性関節症)の症状が悪化しやすい時期です。気温が下がると体がこわばりやすくなり、関節にかかる負担が増えることで、痛みが強くなるケースも少なくありません。

そのまま放っておくと、歩行や排泄、毛づくろいといった日常の動作にまで支障をきたす可能性もあります。しかし、早期に気づいて適切なケアを始めれば、痛みをやわらげて生活の質(QOL)を守ることができます。

そこで今回は、シニア期の犬と猫の関節炎について、症状や治療方法、おうちでできる予防ケアなどをご紹介します。

■目次
1.関節炎とは?年齢とともに起こる関節の変化
2.寒さが関節炎を悪化させる理由
3.見逃さないで!関節炎のサイン
4.動物病院での治療とサポート
5.おうちでできる予防ケア|今日から始める関節サポート
6.まとめ|関節炎ケアで、寒い季節も快適なシニアライフを

関節炎とは?年齢とともに起こる関節の変化


関節炎とは、関節の軟骨がすり減ったり傷んだりすることで炎症が起こり、痛みや運動制限を引き起こす慢性的な疾患です。特にシニア期(7歳以上)の犬や猫では、加齢による関節の変化が原因となって発症しやすくなります。

ただし、関節炎は加齢だけが原因ではありません。過去のケガや遺伝的な体質、肥満などが関係して、若い年齢でも発症することがあります。そのため、年齢にかかわらず、注意が必要な病気です。

また、犬では特に後ろ足や腰、肘の関節に症状が出やすく、猫では肩や腰の関節に違和感を訴えるケースが多く見られます。もし、動きが鈍くなったり、段差を避けたりするような様子があれば、早めの受診を検討しましょう。

寒さが関節炎を悪化させる理由


気温が下がると、体の末端部の血行が悪くなり、関節まわりの筋肉や靭帯がこわばりやすくなります。これにより関節の可動域が狭まり、普段よりも痛みを感じやすくなる傾向があります。

また、冷たいフローリングや床に直接寝そべることで関節が冷え、炎症がさらに悪化してしまうこともあります。寒さが引き起こす筋肉の緊張や血行不良が、関節へのダメージを大きくしてしまうのです。

さらに、冬は散歩の時間が短くなったり、室内でも動かなくなったりする時間が増えがちです。そうなると筋肉量が減少し、関節を支える力が弱まってしまいます。筋肉が減ると、関節への負担はより大きくなってしまうため、悪循環に陥るリスクがあります。

このような理由から、寒さが厳しくなる前に生活環境を整えてあげることが、関節炎予防の第一歩といえるでしょう。

見逃さないで!関節炎のサイン


関節炎は進行がゆっくりで、飼い主様も気づきにくい病気です。特にシニア期になると「年齢のせい」と思い込んでしまい、早期の受診が遅れてしまうケースも少なくありません。以下のようなサインが見られたら、関節の痛みが隠れている可能性があります。

<犬でよく見られるサイン>
・立ち上がるのに時間がかかるようになった
・階段やソファを避けるようになった
・歩き方がぎこちなく、後ろ足をかばうように歩く

<猫でよく見られるサイン>
・高い場所に登らなくなった
・毛づくろいの回数が減った
・トイレの失敗が目立つようになった

猫がトイレを失敗している場合に考えられる原因についてより詳しく知りたい方はこちら

これらは、関節に違和感や痛みがある場合によく見られる行動です。もしひとつでも当てはまるものがあれば、関節炎の可能性があります。症状の進行を防ぐためにも、できるだけ早めに動物病院へ相談することをおすすめします。

動物病院での治療とサポート


関節炎の治療方法は、以下のように症状の程度や年齢、健康状態によってさまざまです。

<軽度の場合>
内服薬やサプリメントによる内科的な治療で炎症や痛みを抑えることが可能です。また、最近では半導体レーザー治療を取り入れている動物病院も増えており、痛みの緩和や血行促進などの効果が期待されています。体への負担が少ない治療法のひとつとして注目されています。

<重度の場合>
関節の状態に応じて外科的な治療(整形外科手術)を検討することもあります。なお、当院では内科・整形外科の両面からアプローチを行い、必要に応じて大学病院や高度医療センターと連携し、二次診療施設へのご紹介にも対応しています。

これらの治療方法について、分からないことやご不安なことがありましたら、お気軽にご相談ください。

おうちでできる予防ケア|今日から始める関節サポート


関節炎の進行を防ぐためには、以下のような日々の生活の中でできる工夫を行うことが大切です。

<冷え対策>
犬や猫の寝床には、厚めの毛布やクッションを使い、床の冷たさが伝わらないようにします。フローリングの上にはカーペットや滑りにくいマットを敷き、足腰の冷えと負担の軽減を心がけましょう。段差を減らす工夫も、関節への負担を和らげるのに効果的です。

<栄養バランスの整った食事管理>
関節の健康を維持するためには、グルコサミンやコンドロイチン、オメガ3脂肪酸などの成分を含むフードやサプリメントの活用がおすすめです。これらは軟骨の保護や炎症の抑制に役立つといわれています。

<無理のない範囲での適度な運動>
関節を動かさない状態が続くと、関節自体が硬くなり、筋肉も衰えてしまいます。痛みが強くならない範囲で、短い時間でも毎日体を動かすようにしましょう。散歩を短くしたり、室内で軽く遊んだりするだけでも十分です。

<体重管理を徹底する>
体重が増えると、関節にかかる負担も大きくなります。特に肥満の犬や猫では、関節の消耗が早まる傾向があります。食事の量や内容を見直し、適正体重を保つことも、関節炎予防の大切なポイントです。

シニア猫の体重管理の適正体重の保ち方についてより詳しく知りたい方はこちら

まとめ|関節炎ケアで、寒い季節も快適なシニアライフを


関節炎は進行性の疾患ですが、早く気づいて対策を始めることで進行を遅らせ、痛みの軽減につなげることができます。寒さが本格化する前に寝床の準備や生活環境を整えるだけでも、関節への負担を減らすことができます。

もし「歩き方がいつもと違う」「動くのをためらう」といった様子が見られたら、それは関節炎のサインかもしれません。大切な愛犬や愛猫が毎日を元気に過ごせるように、早めに動物病院で相談することが大切です。

当院では、症状の評価や生活面のアドバイスを含め、それぞれに合った関節ケアのご提案を行っております。飼い主様と一緒に、愛犬や愛猫がシニア期を快適に過ごせるようサポートしてまいります。

何かわからないことがありましたら、ぜひお気軽に当院までご相談ください。

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