犬や猫の下痢・嘔吐が長引くのはなぜ?超音波(エコー)検査で見つかる消化器疾患
「少しお腹を壊しただけかな」「暑さで食欲が落ちているだけかもしれない」
このように考え、数日間は様子を見ようとされる飼い主様は少なくありません。
特に夏は、暑さや湿度の影響によって犬や猫の胃腸に負担がかかりやすく、下痢や嘔吐、食欲不振などの症状が表れやすい季節です。一時的な体調不良で自然に落ち着く場合もあります。
しかし、症状が数日以上続いたり、何度も繰り返したりする場合は注意が必要です。単なる胃腸炎や夏バテではなく、消化器の病気が隠れている可能性があります。
犬や猫は体調不良を言葉で伝えられません。そのため「元気そうだから大丈夫」と自己判断してしまうと、病気の発見が遅れてしまうケースもあります。
長引く下痢や嘔吐の原因を調べるためには、症状だけで判断するのではなく、必要に応じて血液検査や超音波(エコー)検査などを行い、体の中の状態を詳しく確認することが大切です。
今回は、犬や猫の下痢や嘔吐が長引く原因や、超音波(エコー)検査で分かることについてご紹介します。
■目次
1.犬や猫の下痢・嘔吐の裏に隠れている病気とは?
2.なぜ下痢や嘔吐が続くのかを調べるために検査が必要なの?
3.超音波(エコー)検査で分かること|消化器疾患の診断に役立つ検査
4.エコー検査によって見つかった病気|実際にあった診療例
5.当院が大切にしている、動物に負担の少ないエコー検査
6.まとめ
犬や猫の下痢・嘔吐の裏に隠れている病気とは?
下痢や嘔吐は、犬や猫によく見られる症状です。しかし、同じような症状でも原因となる病気はさまざまであり、症状だけで原因を判断することはできません。
例えば、以下のような病気が隠れている場合があります。
・慢性的な腸の炎症(炎症性腸疾患など)
・膵炎
・消化器の腫瘍
・異物誤飲
・食物アレルギーや食事が合わないことによる消化器障害
犬や猫の誤飲・誤食についてより詳しく知りたい方はこちら
シニアの犬や猫のアレルギーについてより詳しく知りたい方はこちら
このように原因は幅広く、それぞれ治療方法も異なります。
例えば、細菌感染が原因であれば適切な内科治療が必要になります。一方で、異物誤飲や腫瘍などでは外科的な治療や専門施設での診療が必要になる場合もあります。
さらに、高齢の犬や猫では、見た目には元気そうに過ごしていても病気が少しずつ進行していることがあります。食欲が少し落ちた程度と思っていた症状の背景に、重大な病気が見つかるケースも珍しくありません。
そのため「下痢だから胃腸炎」「吐いたから食べ過ぎ」と決めつけず、症状が続く場合には原因を詳しく調べることが大切です。根本的な原因を把握することで、その子の状態に合った治療につなげやすくなります。
なぜ下痢や嘔吐が続くのかを調べるために検査が必要なの?
下痢や嘔吐の原因を見つけるためには、問診や身体検査だけでなく、必要に応じてさまざまな検査を組み合わせて行うことが重要です。
まず、飼い主様から「いつ頃から症状が始まったのか」「嘔吐や下痢はどのくらいの頻度なのか」「食欲や元気に変化はあるか」などを詳しくお伺いします。そのうえで身体検査を行い、脱水や腹部の痛みなど全身の状態を確認します。
さらに、便検査では寄生虫や細菌感染などの有無を調べます。ただし、便検査だけでは、腸の炎症や膵臓の病気、腫瘍など体の内部に起きている異常までは分かりません。
また、血液検査では炎症の程度や脱水の有無に加え、肝臓や腎臓、膵臓などの臓器の状態を評価します。全身の健康状態を把握するうえでも欠かせない検査です。
このように、下痢や嘔吐が続く原因はひとつとは限りません。そのため、症状だけで判断するのではなく、必要な検査を組み合わせながら原因をひとつずつ確認していくことが、適切な治療への第一歩になります。
超音波(エコー)検査で分かること|消化器疾患の診断に役立つ検査
超音波(エコー)検査は、超音波を利用して体の中の様子をリアルタイムで確認できる画像検査です。
レントゲンでは分かりにくい軟らかい組織も観察できるため、長引く下痢や嘔吐の原因を調べる際に非常に重要な検査のひとつです。
検査では、例えば以下のような異常を確認できます。
・腸の壁の厚さや構造の変化
・異物が詰まっていないか
・腸の動きに異常がないか
・リンパ節の腫れ
・膵臓や肝臓、胆のうなど周辺臓器の状態
・腹腔内に液体がたまっていないか
このように、体の内部を詳しく観察できるため、血液検査だけでは見つけにくい異常が見つかる場合もあります。
さらに、超音波(エコー)検査は体への負担が比較的少なく、痛みを伴うこともほとんどありません。犬や猫の状態を確認しながら短時間で検査を進められるため、体調が優れない子にも実施しやすい検査です。
長引く下痢や嘔吐では「何が原因なのか」を正確に把握することが、その後の治療方針を決めるうえで非常に重要になります。当院でも血液検査などと組み合わせながら、必要に応じて超音波(エコー)検査を行い、多角的に原因を調べています。
エコー検査によって見つかった病気|実際にあった診療例
当院では、食欲不振が約1か月続いている犬が来院したことがありました。
食欲は低下していたものの、下痢や嘔吐などの目立った消化器症状はなく、身体検査だけでは原因を特定できませんでした。
そこで血液検査とあわせて超音波(エコー)検査を行ったところ、十二指腸に腫瘍が見つかり、さらに膵炎も併発していることが分かりました。
この症例では、より高度な診断や治療が必要と判断したため、早い段階で二次診療施設をご紹介し、その後は専門施設で治療が進められました。
もちろん、すべての犬や猫で同じ病気が見つかるわけではありません。しかし、この症例からも分かるように、下痢や嘔吐がなくても消化器疾患が隠れている場合があります。
反対に「少し吐いただけ」「少し下痢をしただけ」という症状だけでは、胃腸炎なのか、それとも別の病気なのかを判断することはできません。
症状が長引いている場合や何度も繰り返している場合は、自己判断で様子を見続けるのではなく、必要に応じて超音波(エコー)検査を受けることが、病気の早期発見につながる可能性があります。
当院が大切にしている、動物に負担の少ないエコー検査
当院では、検査の精度だけでなく、犬や猫ができるだけ安心して検査を受けられる環境づくりも大切にしています。
超音波(エコー)検査では、動物を横向きや仰向けにして体勢を保つ必要があります。しかし、硬い診察台の上では体に負担がかかったり、不安から落ち着かなくなったりする子も少なくありません。
そのため当院では、小型犬用・大型犬用それぞれの専用ベッドを使用し、体への負担をできるだけ軽減しながら検査を行っています。クッション性のあるベッドを使用することで、比較的リラックスした状態で検査を受けられる子も多くいます。
また、緊張しやすい子や動いてしまう子では、リラックスした状態で検査を受けられるよう、必要に応じて事前に鎮静作用のあるお薬をご自宅で服用していただく場合があります。犬や猫の性格や体調を考慮しながら、その子に合った方法をご提案しています。
さらに、超音波(エコー)検査では毛を刈ることがありますが、当院では飼い主様のお気持ちや皮膚への負担、その後の生活にも配慮し、診断に支障がない範囲では極力毛刈りを行わないよう努めています。
なお、病変を詳しく確認する必要がある場合には、より正確な診断を行うため、必要最小限の毛刈りを行うことがあります。
このように、当院では「正確な診断」と「犬や猫への負担軽減」の両立を目指し、それぞれの状態に合わせた検査を心がけています。
まとめ
犬や猫の下痢や嘔吐が長引くと、体力が徐々に低下し、食欲が落ちるなど、生活の質にも影響を及ぼすことがあります。
「夏バテだと思っていた」「胃腸炎だからそのうち治るだろう」と考えていた症状の背景に、炎症性腸疾患や膵炎、腫瘍など治療が必要な病気が隠れている場合もあります。
そのため、症状が続く場合や繰り返し表れる場合は、原因を正しく調べることが大切です。血液検査や超音波(エコー)検査を組み合わせることで、体の内部の異常を多角的に評価し、適切な治療方針につなげやすくなります。
また、より高度な診断や専門的な治療が必要と判断した場合には、専門病院や大学病院などの二次診療施設と連携し、その子にとって適した医療をご提案しています。
愛犬や愛猫の下痢や嘔吐がなかなか改善しない場合や、原因が分からず不安を感じている場合は、セカンドオピニオンとしてご相談いただくことも可能です。
当院では、血液検査や超音波(エコー)検査などを組み合わせながら、長引く消化器症状の原因を丁寧に調べ、それぞれに合わせた治療方針を飼い主様と一緒に考えてまいります。気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
■関連する記事はこちらから
犬の嘔吐・下痢の救急対応|すぐに病院へ行くべき症状と応急処置を徹底解説
愛犬の嘔吐や下痢について|気をつけるべきサインと対処法【獣医師が解説】
愛犬の食欲不振、放っておいて大丈夫?|獣医師が教える5つの原因と対処法
東京都世田谷区の動物病院なら『つるまき動物病院』
診察についてはこちらから
TEL:03-6413-5781
