シニア犬の咳が止まらない|心臓病を冬に悪化させないケアと危険なサイン
最近「咳が増えてきた」「散歩を嫌がるようになった」「なんとなく元気がない気がする」と感じたことはありませんか?冬になるとこうした体調の変化が見られ、特にシニア犬を飼っている飼い主様からのご相談が増える時期でもあります。
年齢を重ねた犬では、寒さによる体調の変化を「年齢のせい」「風邪かな」と軽く考えてしまいがちです。しかしその背景には、見過ごしてはいけない「心臓病」が隠れている場合があります。
特にシニア犬の心臓病の多くは、「僧帽弁閉鎖不全症」という疾患です。この病気は進行性で、冬場には悪化しやすいという特徴があります。そのため、咳や呼吸の変化に早めに気づき、適切な対応を取ることが愛犬の命を守ることに直結します。
そこで今回はシニア犬の心臓病について、冬に悪化する原因や見逃してはいけないサイン、ご家庭でできるケア方法などをご紹介します。
■目次
1.僧帽弁閉鎖不全症とは?
2.なぜ冬に悪化するのか?
3.見逃してはいけない「危険なサイン」
4.ご家庭でできる管理方法
5.よくある質問
6.まとめ
僧帽弁閉鎖不全症とは?
僧帽弁閉鎖不全症とは、心臓の左側にある「僧帽弁」が正常に閉じなくなり、血液が本来の流れとは逆方向に逆流してしまう病気です。加齢とともに弁が変性することが主な原因で、シニア犬、特に小型犬によく見られます。
この病気は残念ながら完治するものではなく、進行性の疾患とされています。しかし早期に発見し、内服薬による治療や生活環境の管理を適切に行うことで、病気の進行をゆるやかにし、できるだけ穏やかに暮らしていける可能性があります。そのため、早期発見のためには定期的な健康診断が大切です。
なお、当院では聴診や血液検査、X線、心エコー検査などを通じて心臓の状態を丁寧に確認し、その子の状態や年齢、生活スタイルに合わせた治療や経過観察の方法をご提案しています。
なぜ冬に悪化するのか?
僧帽弁閉鎖不全症が冬に悪化しやすい理由としては、外気温の低下によって血管が収縮し、血圧が上昇するためです。この状態になると、心臓はより強い力で血液を送り出す必要があります。その結果、弁からの血液の逆流が増え、心臓への負担が大きくなってしまうのです。
さらに病状が進行すると、心臓の働きが弱まり、血液の流れが滞ることで肺に水分がたまり、「肺水腫」と呼ばれる状態を引き起こすことがあります。
肺水腫は、肺に水がたまることで呼吸が苦しくなり、まるで溺れているかのような症状を引き起こすため、命に関わる緊急事態です。こうした事態を未然に防ぐためにも、冬場は特に注意が必要です。
見逃してはいけない「危険なサイン」
僧帽弁閉鎖不全症が進行すると、犬の様子に以下のような変化が見られることがあります。
まず気づきやすいのは、「咳」です。特に興奮したとき、運動後、夜間や早朝に出やすい咳には注意が必要です。特徴としては「カハッカハッ」といった乾いた咳が見られることが多いです。
さらに、以下のような症状が見られる場合は、すぐに動物病院を受診してください。
・舌や歯ぐきが紫がかった色になる(チアノーゼ)
・突然ふらつく、倒れる
・意識を失う(失神)
ご家庭でできる管理方法
心臓病と診断された犬が、冬を安心して過ごすためには、ご家庭で以下のような管理や工夫を行うことが大切です。
<生活環境の工夫>
室内での急な温度差は、犬の体に大きなストレスを与え、ヒートショックのリスクを高めます。たとえば、暖房の効いた部屋と廊下や脱衣所の温度差が大きいと、急激な寒暖差により血圧が上がりやすくなります。そのため、愛犬が生活する空間全体をできるだけ均一な温度(21〜25度前後)に保つよう心がけましょう。
<呼吸数のモニタリング>
愛犬が安静にしているとき、あるいは眠っているときの呼吸数を1分間数えてみてください。一般的には、安静時に呼吸数が1分間に30回以上になると異常の可能性があります。普段の呼吸数を把握しておくことで、病状の変化に早く気づくことができ、早期の受診につながります。
よくある質問
Q: 寒い日の散歩は控えたほうがいいですか?
A:体調が安定しているのであれば、無理のない範囲での散歩は問題ありません。ただし、冷たい空気に触れると咳が出やすくなる犬もいます。その場合は、暖かい時間帯に短時間だけ外に出る、あるいは防寒対策をしっかり行うことで、負担を軽減できます。
Q: 冬場の理想的な室温は何度ですか?
A:心臓病を抱える犬が冬場を快適かつ安全に過ごすための室温の目安としては、21〜25度前後が一般的に推奨されています。ただし、これはあくまで目安であり、明確な数字にこだわるよりも、室内の温度を一定に保ち、寒さによる体へのストレスを最小限にすることを意識してください。
Q:呼吸が速いかどうかはどう判断しますか?
A:犬が安静にしている状態、または眠っているときの胸やお腹の動きを1分間観察し、その回数を数えることで判断できます。呼吸数が30回を超えていないかをチェックし、普段から記録をつけておくと、体調の変化に気づきやすくなります。
Q:薬を飲み始めれば治りますか?
A:僧帽弁閉鎖不全症は、基本的に完治が難しい病気です。内服薬によって症状をコントロールしながら、進行をできるだけゆるやかにする治療が中心になります。なお、近年では外科手術による治療という選択肢も出てきており、当院では必要に応じて専門病院をご紹介しています。
まとめ
シニア犬に多い心臓病「僧帽弁閉鎖不全症」は、聴診で心雑音に気づくことが診断のきっかけになることも多い病気です。定期的な健康診断を受けることで、早期に病気を見つけるチャンスが広がります。
「ただの咳」と見過ごしていた症状が、実は心臓に大きな負担がかかっているサインだったということも珍しくありません。病気を正しく理解し、冬場の環境管理や日常の体調チェックを丁寧に行うことで、大切なご家族である愛犬が安心して冬を過ごすことにつながります。
「咳が止まらない」「呼吸が荒い気がする」といった小さな変化に気づいたときは、どうぞお早めにご相談ください。当院では、飼い主様と一緒にその子の状態に合わせたケアを考え、一日でも長く穏やかに過ごせるようサポートいたします。
■関連する記事はこちらから
10歳を過ぎた愛犬の健康を守る|獣医師が教える7つの重要ポイント
犬の僧帽弁閉鎖不全症について┃定期検査で早期発見を
東京都世田谷区の動物病院なら『つるまき動物病院』
診察についてはこちらから
TEL:03-6413-5781
