つるまき動物病院
院長ブログ

夏の暑さからシニア犬の皮膚を守ろう!|高温多湿と皮膚トラブルは背中合わせ

2025年8月1日

夏になると、「愛犬が体をかゆがる」「皮膚に赤みやフケが目立つ」といった様子が見られることはありませんか?このような症状が見られる場合、皮膚に何らかのトラブルが起きている可能性があります。

特にシニア犬は、若い頃と比べて皮膚のバリア機能が弱まり、夏特有の高温多湿な環境の影響を受けやすくなります。その結果、皮膚トラブルが悪化しやすく、回復にも時間がかかる傾向があります。そのため、夏場は特に皮膚の状態に気を配り、日頃のケアや予防を意識することがとても大切です。

今回はシニア犬に多い夏の皮膚トラブルについて、症状や原因、ご自宅でできるケアや予防策などを解説します。

■目次
1.夏に多い!シニア犬の皮膚トラブルの症状とは?
2.夏の老犬皮膚病が起こる主な原因
3.夏場の老犬皮膚ケアと予防対策
4.夏の皮膚病で動物病院を受診するタイミング
5.受診時の注意点
6.まとめ

夏に多い!シニア犬の皮膚トラブルの症状とは?


夏に多く見られる皮膚トラブルの症状としては、主に以下が見られます。

<湿疹や赤み>
皮膚にブツブツや赤みが現れ、触れると熱をもっていることがあります。

<かゆみ>
普段よりも頻繁に身体を掻くようになったり、床や壁に体をこすりつけたりする仕草が目立つようになります。

<脱毛やフケ>
円形脱毛やフケが見られることもあり、被毛がベタついて独特なにおいを放つこともあります。

<膿や悪臭>
膿皮症の場合、皮膚から膿が出たり強い悪臭を伴ったりすることがあります。

また、赤みやかゆみは、以下のような被毛が密集して蒸れやすい部分によく見られます。

首まわり
お腹
足の付け根
足の裏 など

なお、湿気や熱気によってかゆみが強まり、掻く頻度や力が増すことで皮膚が傷つき、症状がさらに悪化することもあります。

特にシニア犬では、新陳代謝や免疫機能の低下により皮膚の回復が遅くなりがちです。そのため、一度治ったように見えても再発しやすく、症状が慢性化したり、治療が長引いたりするケースも少なくありません。

夏の老犬皮膚病が起こる主な原因


シニア犬が夏に皮膚トラブルを起こしやすい原因としては、主に以下が挙げられます。

<蒸れと湿気による皮膚のバリア機能の低下>
高温多湿な夏の環境は、皮膚のバリア機能を弱めてしまう大きな要因です。特に、首輪やハーネスの下など、通気性が悪く蒸れやすい部位では、皮膚がふやけて防御力が落ちやすくなり、細菌やカビが繁殖しやすい状態になります。

<微生物・寄生虫の活性化による皮膚炎の誘発>
夏は、ブドウ球菌やマラセチア(カビの一種)などの微生物が活発になる季節です。これらが皮膚に過剰に増加すると、膿皮症やマラセチア性皮膚炎などの感染症を引き起こす原因になります。さらに、夏はノミやダニの活動も活発になるため、アレルギー性皮膚炎を引き起こすリスクも高まります。

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<加齢による免疫低下と体温調節の乱れ>
前述したように、シニア犬は加齢に伴い、免疫力や皮膚の再生能力が低下する傾向があります。そのため、皮膚トラブルが起きた際に悪化しやすく、治りづらくなることがあります。
また、暑さへの適応力も落ちるため、体温調節がうまくできず、夏の湿気や熱気の影響を受けやすくなり、皮膚状態が不安定になることもあります。

夏場の老犬皮膚ケアと予防対策


夏の皮膚トラブルを予防するためには、以下のような日常的なケアと快適な生活環境の整備が欠かせません。

<涼しい環境作り>
エアコンや除湿機を活用して、室温は25〜27℃、湿度は50〜60%に保ちましょう。エアコンのドライ機能や除湿機で湿気を除去することで、皮膚トラブルの原因となるカビや細菌の繁殖を抑える効果があります。
また、室内の空気を循環させるためにも、窓を開けての換気や扇風機の使用も効果的です。

<散歩と水分補給の工夫>
散歩は、気温が低い早朝や夜の涼しい時間帯に行いましょう。アスファルトの熱も皮膚トラブルの原因になり得るため、肉球のやけど防止にも配慮が必要です。
また、水分補給をこまめに行い、脱水症状や熱中症を予防しましょう。散歩前後や途中での給水も忘れずに行ってください

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<グルーミングとシャンプーの工夫>
毎日のブラッシングは、被毛の通気性を良くし、蒸れや毛玉を防ぎます。犬種や被毛の長さに合ったブラシを使用することが重要です。
また、シャンプーは低刺激の犬用シャンプーを選び、ぬるめのお湯で手早く洗いましょう。しっかりすすいだ後は、タオルドライとドライヤーで毛の根元まで完全に乾かします

なお、耳の内側や足の指の間は蒸れやすく、雑菌が繁殖しやすい場所であるため、こまめに拭いて清潔を保つように心がけましょう。

夏の皮膚病で動物病院を受診するタイミング


皮膚トラブルは早期に対応することで悪化を防げる可能性があるため、以下のような症状が見られた場合は早めに動物病院を受診してください。

強いかゆみや脱毛が続いている
皮膚から膿が出たり、悪臭がしたりする
広範囲に赤みや腫れが見られる
元気がなく、食欲の低下、発熱、嘔吐や下痢といった全身症状がある

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軽度の湿疹やかゆみが数日で改善するようであれば、まずは清潔な環境でのケアを継続しつつ様子を見ることも可能です。

しかし、症状が長引く、範囲が広がる、繰り返し発症するような場合は自己判断で放置せず、早めに動物病院を受診することが大切です。なお、家族や他の犬や猫への感染が疑われる場合も、早めの受診をおすすめします。

受診時の注意点


夏場に犬や猫を動物病院へ連れて行く際は、移動中の暑さ対策もとても重要です。

特にキャリー内は熱がこもりやすいため、保冷剤をタオルに包んで入れる、通気性の良い素材を使うなどして涼しい環境を整えてあげましょう。また、移動中はこまめに水分補給のタイミングをつくることも大切です。

さらに、直射日光をできるだけ避けられるようにする、車内の温度管理を徹底するなど、できる範囲で熱中症を防ぐ工夫を心がけましょう。

まとめ


夏は高温多湿な気候の影響で、シニア犬の皮膚トラブルが増えやすい季節です。加齢により免疫力や皮膚の再生能力が低下すると、皮膚のトラブルが悪化しやすくなり、治るまでに時間がかかってしまうこともあります。

そのため、日頃から皮膚の状態をよく観察し、「いつもと違うかな?」と感じたときは早めに対処することが大切です。

また、こまめなケアや、清潔で風通しのよい環境を整えることも、皮膚トラブルの予防につながります。毎日の積み重ねが、愛犬の健康を守る大きな力になります。

当院では、皮膚トラブルに関するご相談や診察を随時受け付けております。気になる症状がありましたら、どうぞお気軽にご来院ください。

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