つるまき動物病院
院長ブログ

シニア犬の前庭疾患|気圧変化が引き起こすふらつきとその対策

2025年6月4日

最近、愛犬が急にふらついたり、倒れ込んだりするといった様子が見られたことはありませんか?このような症状は「年齢のせいかな」と見過ごされがちですが、実は「前庭疾患」と呼ばれる病気が隠れている可能性があります。

前庭疾患は特にシニアの犬に多く見られ、体のバランスを保つ機能に影響を及ぼす病気です。ふらつきや頭の傾きといった、飼い主様が気づきやすい症状が突然現れるため、異変に気がついたら、早めに対応することが大切です。

今回はシニア犬に多く見られる前庭疾患について、症状の特徴や気圧変化との関係、そして日常生活で実践できる対策などを解説します。

■目次
1.前庭疾患とは?
2.気圧変化が症状に与える影響
3.平衡感覚障害の症状と老化の見分け方
4.日常でできる予防と管理
5.まとめ

前庭疾患とは?


「前庭」とは、犬の耳の奥にある平衡感覚をつかさどる部分を意味します。この前庭に何らかの異常が生じると、ふらつきや眼振などの症状が見られます。

特にシニアの犬に多く見られるのが「特発性前庭疾患」です。これは明確な原因がわからないまま突発的に起こるタイプの前庭疾患で、命に関わることは少ないものの、症状が急激に進行する可能性があります。

また、前庭疾患の症状は時間の経過とともに徐々に落ち着いてくることがほとんどです。しかし、回復するまでの間は、愛犬が安心して過ごせるよう介助やサポートが必要となります。

気圧変化が症状に与える影響


季節の変わり目などでは、気圧が大きく変動する日が続きます。このような気圧の変化は、犬の内耳にある前庭機能の働きを不安定にする可能性があります。

特に低気圧が接近するタイミングでは、前庭神経が影響を受けやすくなります。なお、すでに前庭疾患を経験している犬では、再発や症状の悪化を引き起こすきっかけになることもあるため注意が必要です。

日頃から気象情報をチェックし、気圧の低下が予想される日は、愛犬の様子をいつも以上に丁寧に観察することが大切です。

平衡感覚障害の症状と老化の見分け方


前庭疾患では、以下のような症状が見られます。

・急にふらつく、まっすぐ歩けない
・片方に頭を傾ける(斜頸)
・同じ方向にぐるぐると回る(旋回)
・眼球が左右に小刻みに動く(眼振)
・吐き気
・食欲の低下

これらの症状は突然現れることが多く、発症直後は特に強く出る傾向があります。回復には数日から数週間かかる場合があります。

犬の食欲不振の原因や対処法についてより詳しく知りたい方はこちら

<老化との違いを見分けるポイント>
シニア犬では、筋肉の衰えや関節のこわばりによって、ふらつきや歩行の不安定さが見られることがあります。しかし、前庭疾患との大きな違いは「症状の現れ方」です。

加齢による変化はゆっくりと進行するのに対し、前庭疾患ではある日突然、明らかな異常が起こります。たとえば、前日までは普通に歩いていたのに、急にバランスを崩して倒れる、眼球が激しく動く、というような急激な変化があれば、老化ではなく前庭疾患の可能性が高いと言えるでしょう。

このようなサインに気づいたときには、早めに動物病院での診察を受けることが大切です。

日常でできる予防と管理


特発性前庭疾患は、現時点では明確な予防法がありません。しかし、発症時の早期発見や適切な対応によって、犬への負担を大きく軽減できます。そのため、日頃から愛犬の歩き方や表情、食欲などを観察し、いつもと違う様子があればすぐに対応できるよう備えておきましょう。

また、急激な環境の変化やストレスは、体調を崩すきっかけにもなります。できるだけ生活リズムを整え、安心できる静かな環境を保つことが、予防につながります。

<安全な生活環境の整え方>
前庭疾患の症状が出たとき、犬が転倒したり家具にぶつかったりしないよう、以下のような室内環境を整えておくことが大切です。

・フローリングには滑り止めのマットを敷く
・段差のある場所にはスロープを設置するか、段差そのものを解消する
・クッション性の高いベッドを用意して、倒れても衝撃が少なく済むようにする
・食器や水飲み器は安定した場所に置き、滑らない工夫をする

まとめ


前庭疾患は、シニア犬に多く見られる病気の一つで、気圧の変化が激しい時期に症状が現れたり悪化したりします。

また、前庭疾患を完全に予防するのは難しいものの、日頃から気圧の変化に注意を払いながら愛犬の様子を観察することが大切です。あわせて、安心して過ごせる環境を事前に整えておくことで、発症した際の負担を軽減できます。

当院では、前庭疾患に関するご相談にも対応しております。「いつもの様子と違うかも?」と感じたときは、お気軽にご相談ください。早めの対応が、愛犬の負担を和らげる第一歩となります。

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