つるまき動物病院
院長ブログ

【獣医師解説】犬の足腰の衰えを防ぐ7つの対策|年齢・体格別の具体的なケア方法

2025年1月15日

愛犬の足腰が弱くなってきたと感じると、このまま歩けなくなってしまうのではないかと不安になりますよね。加齢による変化は避けられませんが、若いうちから適切な予防や対策を行うことで、その進行を遅らせることが可能です。

今回は犬の足腰の衰えについて、予防法や対策、ケア方法などをご紹介します。

■目次
1.足腰の衰えのサインとは?
2.足腰が弱る原因について
3.室内での予防対策
4.適切な運動方法
5.食事とサプリメントによるケア
6.動物病院での検査や治療
7.まとめ

足腰の衰えのサインとは?


以下のような症状が見られる場合は、足腰が衰えてきているサインかもしれません。

・立ち上がるまでに時間がかかる
・背中を丸めてトボトボ歩く
・ふらつきながら歩く
・階段の上り下りをしなくなる
・お散歩を嫌がる
・寝ている時間が増える
・粗相が増える

また、小型犬よりも大型犬の方が足腰の衰えが早い段階で現れます。小型犬であれば10歳くらいから徐々に足腰の衰えが見られるようになりますが、大型犬は5歳くらいから足腰の衰えが見られるようになります。

足腰が弱る原因について


私たち人間と同じように、犬も加齢によって自然に足腰は弱っていきます。さらに、肥満や運動不足、筋骨格系の持病などがあると、足や腰に大きな負担がかかるため、衰えを加速させてしまいます。

また、大型犬は体重が重く、その分足腰に大きな負担がかかるため、小型犬よりも早い時期から足腰の衰えが見られるようになります。

室内での予防対策


普段の生活に以下のような工夫を取り入れるだけで、足腰への負担を軽減させることができます。

・滑る床材には滑り防止マットを設置する
・階段の手前に柵を設置して上り下りできなくする
・ソファなど、飛び登れるような家具をどかす
・寝床はクッション性のあるものを選ぶ

また、高齢になると体温調節機能も衰えることから、暑かったり寒かったりすると活動性が落ち、筋力の低下につながります。そのため、快適に過ごすことができるよう、室温は20℃前後、湿度は50〜60%くらいをキープするようにしましょう。

すでに足腰の衰えが気になりだした場合は、寝床とトイレ、食事の場所などをなるべくコンパクトにまとめるようにすると、食事量が落ちずに済んだり、粗相が減ったりします。そのため、日頃から愛犬の様子をよく観察し、状況に応じた対策を取り入れて、快適に過ごせるように工夫してあげましょう。

適切な運動方法


運動は少なすぎても多すぎてもあまり良くなく、適度に行うことが大切です。そのため、以下を参考に、散歩量を調節しましょう。

<散歩量の目安>
小型犬:1回20〜30分を1日に2回
中型犬:1回30分を1日に2回
大型犬:1回60分を1日に2回

また、散歩コースに坂道を入れるようにすると、平坦な道だけを歩く時よりも足腰を鍛えることができるのでお勧めです。

散歩だけで運動量を確保することが難しい場合は、室内での運動も取り入れましょう。手軽に取り入れられる遊びとしては、ロープの引っ張り合いやボールを投げて取ってくる遊びがお勧めです。ただし、先程もご紹介したとおり、フローリングなどの滑る床材は逆に足腰に負担をかけてしまうため、必ず滑り防止マットを設置してから遊ぶようにしてください。

また、私たち人間と同じように、犬の場合も運動の前後にはストレッチやマッサージを取り入れるようにしましょう。足や背中をさすったり、手足の曲げ伸ばしをしたりして、しっかりと筋肉や関節をほぐしてください。

食事とサプリメントによるケア


犬に必要な栄養素は年齢によって異なるため、まずは愛犬の年齢に合った総合栄養食を選びましょう。肥満は足腰に負担がかかるため、必ず体重に合った給餌量を確認してくださいね。

また、足腰に衰えを感じたら、サプリメントなどを活用して、以下の成分を積極的に摂るようにすると良いでしょう。

<グルコサミン塩酸塩>
アミノ酸の一種で体の中でヒアルロン酸をつくり、関節の動きをスムーズにしたり、関節の痛みを抑えたりする効果が期待できます。

<コンドロイチン>
グルコサミンと併用することで、関節の痛みや炎症を抑えたり、関節の動気をサポートしたりする効果が期待できます。

<MSM(メチルスルホニルメタン)>
コラーゲンを作るために必要な成分で、関節の痛みや炎症を抑える働きがあります。

<EPA/DHA>
オメガ3脂肪酸の一つで、関節の痛みや炎症を抑える効果が期待できます。

犬用のサプリメントは種類が多く、それぞれ形状やフレーバー、成分などが異なります。動物病院でもサプリメントの取り扱いがあるため、どれを選べばよいかわからない場合は、かかりつけ医に相談してみましょう。

また、足腰が弱っていると、水飲み場まで行くのが億劫になり、飲水量が低下することがあります。そのため、寝床の近くに水飲み場を移動させたりフードをウェットタイプのものに変えたりするなどして、しっかりと水分補給も行いましょう。

動物病院での検査や治療


歩き方に変化があったとしても、それが単なる加齢によるものか、病気によるものなのかを判断することはできません。そのため、いつもと歩き方が違う場合や、そもそも歩きたがらない場合などは、念のため病院で検査を受けるようにしましょう。

動物病院では問診や身体検査、画像検査、歩行検査、神経学的検査などを行い、総合的に診断をします。

そして診断結果を元に治療方針を定め、原因や症状に合った治療を進めていきます。また、徒手療法や物理療法といったリハビリテーションを取り入れることもあります。

<徒手療法>
マッサージやストレッチなど、人の手を使って行うリハビリ

<物理療法>
レーザーや超音波、温熱、電気などを利用したリハビリ

ただし、前述したように日頃から適度に運動を行うなどして、足腰の衰えを予防することも大切です。早期の段階で足腰が弱っていることに気付けるよう定期検診を受け、愛犬に少しでも元気で長生きしてもらいましょう。

まとめ


犬も人間と同じように年を重ねると足腰が衰えてきますが、若いうちから適度な運動を行い筋肉量を維持したり、関節に良い成分を積極的に摂取したりすることで、シニア期に突入しても元気に走り回ることができます。

また、早期発見ができればリハビリなどによって足腰の元気を取り戻すことができる可能性が高くなるため、定期的に健康診断を受けるように心がけましょう。本記事を参考に、気になる症状が見られた場合は、なるべく早めに動物病院に相談しましょう。

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