猫の肥大型心筋症について|中高齢に発生しやすい疾患
肥大型心筋症は猫ではとても一般的な心臓疾患で、特に7歳以上の3割ほどがかかっているともいわれています。発症すると、口を開けて苦しそうに呼吸をすることがある他、突然倒れてぐったりとする場合や、中には突然死してしまうケースもあります。そのため、肥大型心筋症では早期発見と適切な治療を進めることが重要です。
今回は猫の肥大型心筋症について、診断や治療法などを詳しくご紹介します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
原因
心臓は右心房、右心室、左心房、左心室という4つの空間に分かれていますが、肥大型心筋症とは心室の壁の筋肉(心筋)が肥大する(厚みが増す)疾患のことです。
特に中高齢の猫に多くみられ、メインクーンやラグドール、アメリカン・ショートヘアなどの純血種でよくみられることから、遺伝的要因があるのではないかと考えられています。
それ以外にも、甲状腺機能亢進症や全身性の高血圧など、他の病気に関連して発症することもあります。
症状
心室の壁が肥大化すると硬くなり、広がりにくくなることで、血圧の上昇や血流のうっ滞などが起こり、様々な症状が現れます。
よくみられる症状としては、呼吸の速度が増す(頻呼吸)、苦しそうに口を開けて呼吸する、動きたがらないといったものが挙げられます。
さらに、血流がうっ滞することで血栓ができやすくなるため、動脈血栓症によって突然後ろ足が動かなくなることもあります。
また、心臓の機能不全により失神し、急に倒れるケースもあります。
ただし、心筋が肥大していても必ずしもこれらの症状が現れるわけではありません。
診断方法
肥大型心筋症を正確に診断するには、画像検査が非常に重要です。
病院では心臓の聴診とともに、レントゲンや心臓のエコー検査を行います。レントゲンでは「バレンタインハート」と呼ばれる、心房が膨らんだ特徴的な像がみられることがあります。
そのため、心臓のエコー検査では、心臓の形状や血流、心室の壁の厚み、心房の大きさなどを詳細に観察します。この中で特に心室の壁の厚みが重要で、5.5 mmを超えた場合には肥大型心筋症と判断します。
また、左心室の流出路(血液の通り道)が狭まっているかどうかもチェックされ、狭窄している場合は閉塞性肥大型心筋症という危険な状態だと判断できます。
その他にも、高齢の猫の場合、甲状腺機能亢進症の持病をもっていることも多いため、疑わしい場合はホルモン検査を実施するケースもあります。
治療方法
病気の進行度に応じて治療薬は異なりますが、基本的には内科療法によって管理します。
肥大型心筋症の場合、心筋の肥大により心臓に流入する血液量が減少するため、それを補うために猫の体は心拍数を上げようとします。しかし、心拍数が上がり過剰に動いてしまうことで肥大が加速する、という悪循環に陥ってしまいます。
その悪循環を断ち切るために、心拍数を落ち着かせる薬の処方を提案する場合があります。
一方で、ピモベンダンという、心不全治療薬を優先して処方する動物病院もありますが、閉塞性肥大型心筋症の場合は、かえって病気を悪化させる原因となってしまうため、事前に正確な診断と適切な治療薬を選択することが重要になります。
予防法やご家庭での注意点
中高齢になると肥大型心筋症が発症しやすくなるため、目立った症状がない場合でも、定期的な動物病院の受診が非常に重要です。その際には、聴診や画像診断(レントゲンやエコー)に加え、血圧測定と心電図検査の実施もご検討ください。なぜなら、血圧と心拍数が高くなるとすぐに心筋が肥大してしまうため、それらの数値を正確に把握することが大切だからです。
また、腎臓機能の低下は血圧上昇のリスクを高めるため、慢性腎臓病などの持病がある場合は注意が必要です。
まとめ
肥大型心筋症は、根治が難しいものの、早期診断できれば薬で長期間管理できる疾患です。
定期健診で健康状態を確認し、早期発見と早期治療を心がけましょう。
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