つるまき動物病院
院長ブログ

気づかぬうちに進行する「猫の高血圧」|シニア期の心臓・腎臓・目を守るための血圧管理

2026年3月27日

最近、愛猫が「年齢を重ねてきたけれど、まだ元気そうだから大丈夫」と感じている飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。猫は体調の変化を表に出しにくい動物です。そのため、見た目では分かりにくい病気が体の中で進行している可能性があります。

その代表的な病気のひとつが「高血圧」です。人と同じように、猫でも血圧が高くなる場合があります。猫の高血圧は目立った症状が見られず、気づいた時には臓器に影響が及んでいるケースも少なくありません。このような特徴から「サイレントキラー」と呼ばれることもあります。特に10歳以上のシニア猫では、高血圧が見られる機会が増えるといわれています。

また、3月は寒暖差が大きく、血管に負担がかかりやすい時期です。見た目が元気であっても、血圧が高い状態が続くと、目や腎臓、心臓などに影響が及ぶ可能性があります。そのため、シニア期の猫では血圧の状態にも目を向けながら健康管理を行うことが重要です。

今回は、猫の高血圧が引き起こす深刻なダメージや、動物病院での血圧測定、飼い主が気づけるサインなどをご紹介します。

■目次
1.高血圧が引き起こす「3つの深刻なダメージ」
2.動物病院での血圧測定は痛くない?怖くない?
3.飼い主様が気づける「高血圧のサイン」
4.よくある質問(FAQ)
5.まとめ

高血圧が引き起こす「3つの深刻なダメージ」


猫の高血圧は体のさまざまな臓器に影響を与える可能性があります。特に注意したいのは、目・腎臓・心臓・脳への影響です。

<目への影響>
猫の高血圧で比較的知られているのが、視力の低下や突然の失明です。
血圧が高い状態が続くと、目の奥にある血管に負担がかかります。その結果、眼底出血が起きたり、網膜がはがれたりする場合があります。これにより視力が急に低下する場合があります。

飼い主様が気づくきっかけとしては、以下のような変化があります。

・瞳孔が開いたままで、目がキラキラして見える
・家具や壁にぶつかる
・段差を踏み外す

当院でも「年齢のせいで瞳孔が開いているのかと思っていたら血圧が高かった」というケースが実際にありました。その猫は血圧の上昇によって目の異常が起きており、状態が急激に悪化してしまいました。

このように、高血圧は突然視力に影響が出ることがある病気です。

<腎臓への影響>
猫の高血圧は、腎臓の病気と深い関係があります。
腎臓は血液をろ過する働きを持つ臓器ですが、血圧が高い状態が続くと、腎臓の細い血管に負担がかかります。その結果、腎臓の働きが低下し、腎不全の進行につながる場合があります。

また、慢性腎臓病がある猫では高血圧が併発する場合があります。腎臓病によって血圧が上がったり、血圧の上昇によって腎臓への負担が増えたりするため、状態が悪化する循環が生じる場合もあります。

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<心臓・脳への影響>
高血圧の状態が続くと、心臓にも負担がかかります。心臓は強い圧力に対して血液を送り出す必要があるため、心臓の筋肉が厚くなる心肥大が見られる場合があります。

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また、脳の血管に影響が及ぶと、ふらつきや脳出血による神経症状が表れる場合もあります。頻度は高くありませんが、重い症状につながる可能性もあるため注意が必要です。

動物病院での血圧測定は痛くない?怖くない?


猫の高血圧は、見た目の様子だけでは気づきにくいことが多く、血圧を測定してはじめて分かる場合も少なくありません。そのため、猫の健康状態を把握するうえでは血圧測定が大切になります。

猫の血圧測定と聞くと、負担の大きい検査を想像する飼い主様もいらっしゃるかもしれません。しかし実際には、体への負担が少ない検査です。

血圧測定では、前足や尻尾に小さなカフを巻いて測定します。人の血圧測定と似た仕組みで、痛みを伴う検査ではありません。測定時間は5〜10分程度です。

ただし、猫は環境の変化に敏感な動物です。緊張すると血圧が一時的に上昇する場合があります。そのため当院では、診察室の環境に慣れてから測定したり、複数回測定して数値を確認したりするなど、その猫の状態に合わせた方法で測定を行っています。

また、定期的に血圧を測定すると、その猫の普段の血圧の傾向が見えてきます。このような情報があると、数値の変化を早期に把握しやすくなります

飼い主様が気づける「高血圧のサイン」


猫の高血圧は前述したように、はっきりとした症状が出ないことが多い病気です。しかし日常生活の中で、以下のような変化が見られることがあります。

・夜中に大きな声で鳴くようになった(高血圧による不安感や不快感が関係している可能性)
・以前より落ち着きがなくそわそわした様子が見られる
・家具にぶつかったり段差を踏み外したりする(視力の変化が疑われる行動)

こうした変化は「年齢によるもの」と思われがちですが、その背景に体調の変化が隠れている場合もあります。気になる様子が見られたときは、早めに動物病院へ相談すると安心です。

また、腎臓病や甲状腺機能亢進症といった持病がある猫では、高血圧が合併することがあります。そのため、このような病気がある場合には、定期的に血圧を確認することが重要です。

よくある質問(FAQ)


Q:家で人間用の血圧計を使って測ることはできますか?
A:人用の血圧計は猫の体格や測定方法に適していないため、正確な血圧を確認するのが難しい場合があります。そのため、猫専用の機器を使用し、落ち着いた環境で測定する方法が望ましいとされています。

Q:血圧が高いと診断されたら、一生お薬が必要ですか?
A:猫の高血圧では、長期的にお薬で血圧を管理するケースが多いですが、原因となる病気の状態によって治療方針が変わることもあります。

Q:猫に減塩食は必要ですか?
A:人の高血圧と異なり、猫では単純な塩分制限だけで血圧が改善するとは限りません。腎臓病など基礎疾患に合わせた食事管理が重要になります。フードの変更は、獣医師に相談して進めると安心です。

Q:暴れる猫でも血圧測定は可能ですか?
A:猫の性格や緊張の程度に合わせて、無理のない方法で測定を行います。落ち着くまで待ったり、複数回に分けて測定したりする方法で対応する場合もあります。

まとめ


猫の高血圧は症状が分かりにくく、気づいた時には目や腎臓などの臓器に影響が及んでいる場合があります。そのため、血液検査だけでなく血圧の状態を確認すると、健康状態をより広い視点で把握しやすくなります。

また、高血圧の管理は寿命だけでなく、猫が穏やかな毎日を過ごすための健康管理にもつながります。シニア期に入った猫や、腎臓病・甲状腺疾患を抱える猫では、血圧のチェックが役立つ場合があります。

なお、春は寒暖差が大きく、体調の変化が起こりやすい時期でもあります。健康チェックの一環として、血圧の状態を確認してみるのも良い機会です。

当院では、健康診断や別の症状で来院された際にも、診察の際に目の違和感や数字の急変が見られる場合など、必要に応じて血圧測定をご提案することがあります。こうした確認を通して、猫の体調に合わせた健康管理を飼い主様と一緒に考えていきます。「年齢によるものかな」と思うような小さな変化でも、どうぞお気軽にご相談ください。

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