シニア犬のリンパ腫|治療法と生活の質を守るために大切なこと
「最近、首のまわりにしこりのようなものがある」「食欲が落ちて体重も減ってきた気がする」シニア犬と暮らす飼い主様から、そんな不安のお声をよく伺います。
高齢犬に多く見られる病気のひとつにリンパ腫があります。リンパ腫は犬に発生する代表的ながんで、早期に発見し、適切な治療やケアを行うことで、生活の質を維持しながら過ごせる時間を延ばすことが可能です。
今回は、犬のリンパ腫の治療法や日常ケア、動物病院との連携の大切さについてわかりやすく解説します。
■目次
1.シニア犬のリンパ腫とは?早期発見のサインを知ろう
2.治療選択肢を理解する|抗がん剤から緩和ケアまで
3.治療中の生活の質を保つために|日常ケアのポイント
4.動物病院との連携で最適な治療を|定期的な相談の重要性
5.よくある質問(Q&A)
6.まとめ
シニア犬のリンパ腫とは?早期発見のサインを知ろう
リンパ腫は、体の免疫を支える「リンパ球」という細胞ががん化して増えてしまう病気です。犬に発生する腫瘍の中でも発症率が高く、特に7歳以上のシニア犬で見つかることが多いといわれています。
〈よく見られる症状〉
・首やあごの下、足の付け根などのリンパ節が腫れる
・食欲が落ち、体重が減る
・元気がなく、すぐ疲れる
・嘔吐や下痢が続く
・皮膚や呼吸器など、発生部位によってさまざまな不調が出る
初期には痛みがなく、犬自身も普段通りに見えることがあります。そのため「年齢のせいかな」と見過ごされがちですが、小さな違和感が早期発見のヒントになります。
治療選択肢を理解する|抗がん剤から緩和ケアまで
犬のリンパ腫にはいくつかの治療法があり、愛犬の年齢や体力、そして「どう暮らしてほしいか」によって最適な選択肢は変わってきます。
1. 抗がん剤治療
最も一般的な治療法で、症状を抑え、寛解(症状が落ち着く状態)を目指します。副作用はありますが、人と比べると犬では軽度であることが多いとされています。
最近では「感受性試験」という検査を行うことで、その子に効果が期待できる薬を選べるようになり、より効率的な治療が可能になっています。
2. ステロイド投与
進行が早い場合や抗がん剤が難しい場合に用いられます。リンパ節の腫れや不快な症状を和らげる効果がありますが、根本的な治療にはなりません。
3. 外科療法
リンパ腫が全身に広がらず、特定の部位にだけできている場合は、外科手術で切除できるケースもあります。ただし、がん細胞は全身に潜んでいることが多いため、外科治療は補助的な役割にとどまり、単独での治療は限られます。
4. 放射線療法
局所的なリンパ腫や痛みの強い部位に対して行われることがあり、症状を和らげる効果があります。抗がん剤治療と組み合わせることで効果を高めることもあります。
5. 緩和ケア(ターミナルケア)
「がんを治す」よりも「生活の質を保つこと」を重視したケアです。痛みを和らげ、生活環境を整えることで、愛犬が穏やかに過ごせる時間を支えます。
〈治療法を選ぶときのポイント〉
・愛犬の年齢・体力・持病の有無
・ご家庭のライフスタイル(通院頻度の調整など)
・治療にかかる費用や期間
犬のリンパ腫治療に「これが正解」という答えはありません。大切なのは、その子とご家族にとって最も納得できる方法を選ぶことです。
治療中の生活の質を保つために|日常ケアのポイント
治療中の愛犬にとって、ご家庭でのサポートはとても大きな力になります。病院での治療だけでなく、日常生活の中で「いかに快適に過ごせるか」が、心と体の回復力にもつながります。
◾️ 食事管理と栄養サポート
治療中は体力が落ちやすいため、消化が良く、栄養価の高いフードを選びましょう。食欲が落ちているときは、フードを軽く温めて香りを立たせたり、水分を加えて柔らかくしたりすると食べやすくなります。
◾️ 運動と休息のバランス
無理に長時間歩かせる必要はありませんが、外の空気を吸うことは心身のリフレッシュになります。短時間でも散歩に出て気分転換をすることが大切です。逆に疲れやすいときは無理をせず、静かに休める場所を整えてあげましょう。
◾️ スキンシップと観察
治療中は、不安やストレスを感じやすくなります。優しく撫でたり声をかけたりするスキンシップは、安心感を与え、精神的な支えになります。同時に、毎日の観察も欠かせません。「食欲」「排泄」「元気さ」「毛並み」などの変化を簡単にメモしておくと、診察の際に獣医師へ正確に伝えることができます。
動物病院との連携で最適な治療を|定期的な相談の重要性
リンパ腫は進行が早い病気のため、治療を続けながら定期的に診察や血液検査で状態を確認することが欠かせません。
以下に、治療を進めるうえで特に大切なポイントをまとめます。
・治療方針は獣医師としっかり相談する
・定期検査で体調や副作用をチェックする
・状況に応じてセカンドオピニオンも活用する
当院では、セカンドオピニオンのご相談も積極的に承っております。「今の治療で本当に大丈夫かな」「他の治療法も知りたい」そんなお気持ちがあるときは、どうぞお気軽にご相談ください。
よくある質問(Q&A)
Q:リンパ腫は治りますか?
完全に治すことは難しいといわれていますが、治療によって症状を抑え、生活の質を維持できる期間を長く保つことが可能です。
Q:抗がん剤は副作用が強いのでは?
人と比べて犬では副作用が軽く済む場合が多いです。ただし個体差がありますので、体調変化があればすぐにご相談ください。
Q:通院はどれくらい必要ですか?
治療法によって異なりますが、抗がん剤治療では週1回程度の通院から始まるケースが一般的です。状態に応じて調整します。
Q:セカンドオピニオンだけでも診てもらえますか?
はい、当院ではセカンドオピニオンを承っております。他院で治療中の方も安心してご相談ください。
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まとめ
シニア犬に多く見られるリンパ腫は、早期発見と適切な治療、そしてご家庭でのサポートが鍵となります。
治療を続ける中で大切なのは「病気と闘うこと」だけでなく、「どうすればその子が穏やかに過ごせるか」を一緒に考えることです。
愛犬の体調に不安を感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。
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