つるまき動物病院
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シニア猫の夏バテは要注意!腎臓病・心臓病との関連と対策方法

2025年9月2日

毎年、夏が近づくと「愛猫の元気がない気がする…」「食欲が落ちているけれど、これってただの夏バテ?…」と不安になる飼い主様も多いのではないでしょうか。

特に高温多湿な日本の夏は、シニア猫にとって身体への負担が大きくなりがちです。さらに、年齢とともに体温調節の機能が衰えるため、若い猫と比べて夏バテを起こしやすいです。しかし、単なる夏バテと思っていた症状が、実は腎臓病や心臓病の悪化によるものだった、というケースも少なくありません。

そこで今回は、シニア猫の夏バテに潜むリスクや、腎臓病・心臓病との関連、そしてご家庭で実践できる予防法などについて解説します。

■目次
1.見逃してはいけない危険サイン
2.腎臓病を持つシニア猫の夏場の注意点
3.心臓病を持つシニア猫の夏場のリスク管理
4.今すぐできる!シニア猫の夏バテ予防と対策
5.よくある質問(Q&A)
6.まとめ

見逃してはいけない危険サイン


もともと猫は砂漠地帯を祖先にもつ動物で、暑さには比較的強いものの、「湿度」にはとても弱い傾向があります。特にシニア猫は年齢とともに体温調整機能が低下するため、夏の暑さと湿気の影響を強く受けやすく夏バテを起こしやすいです。

シニア猫が夏バテになると、以下のような症状が見られます。

食欲の低下
嘔吐や下痢
水を飲む量の変化(増えたり、急に減ったりする)
ぐったりしている、寝てばかりいる

これらは一見、単なる疲れに見えるかもしれませんが、こうした症状が腎臓や心臓の不調によるものである可能性もあります。

そのため、単なる体調不良と自己判断してしまうと、病気の発見や治療の開始が遅れてしまう危険があるため、日頃から以下を意識して観察してみましょう。

ご飯の食べ方の変化
水の飲み方や減り具合
活動量が減っていないか

これらの変化が見られたら、まずは動物病院に相談することが大切です。

腎臓病を持つシニア猫の夏場の注意点


腎臓病とは、腎臓が本来の役割を十分に果たせなくなり、水分や老廃物の排出がうまくできなくなる病気です。夏の暑さで脱水が進むと、体内の水分がさらに失われ、腎臓には大きな負担がかかります。

特に夏バテによる嘔吐や下痢は水分不足をより深刻にし、腎臓病を悪化させる原因となります。さらに、脱水は血液の流れが悪くなり腎臓への血流を減らし、機能の低下を進行させてしまいます。そのため、日頃から十分な水分補給を意識することがとても大切です。

また、以下のような症状は緊急性が高いです。迷わず動物病院を受診して、適切な処置を受けてください。

ぐったりして動かない
まったくご飯を食べない
尿が出ていない

犬と猫の慢性腎臓病の症状や注意点についてより詳しく知りたい方はこちら

 

心臓病を持つシニア猫の夏場のリスク管理


シニア猫では心臓の働きも徐々に弱まってきます。暑さは血流を調整する働きを活発にするため、心臓にかかる負担が増します。そのため、心臓病を抱えている猫にとって、夏の暑さは病状悪化の大きな引き金となるのです。

特に注意すべき体調の変化としては、主に以下が挙げられます。

呼吸が速くなる
口を開けて呼吸する
後ろ足が冷たい、動かない
ぐったりして動かない

これらは心臓病が悪化している可能性があり、緊急対応が必要です。

シニア猫の心筋症の季節別の症状や管理ポイントについてより詳しく知りたい方はこちら

今すぐできる!シニア猫の夏バテ予防と対策


シニア猫を夏バテから守るには、以下のように日常のちょっとした工夫が大きな効果を生みます。

<室内環境の整備>
エアコンで室温を一定に保つ(25℃前後が目安)
湿度を50〜60%に保つ
直射日光の当たらない場所を用意する
猫が移動しやすいように動線を確保する
風が直接当たらないような配置にする

<食事の工夫>
ウェットフードを活用して食事から水分を摂らせる
温めたりトッピングを加えたりすることで食欲を刺激する
栄養バランスに優れた総合栄養食を与える

<水分補給の工夫>
水飲み場を複数用意し、場所も定期的に変える
器を広く浅いものに変えてみる
循環式の水飲み器で興味を引く
スープやペーストタイプの水分補助食品を活用する

もし、食欲が落ちたまま戻らない、元気がない、嘔吐や下痢が続く、水をほとんど飲まない、といった状態が続くようであれば、早めに動物病院に相談してください。特に持病のあるシニア猫では、ほんのわずかな体調の変化が急激な悪化につながることもあるため、注意が必要です。

 

よくある質問(Q&A)


Q:シニア猫の夏バテはいつから注意すべきですか?
A:春から夏への季節の変わり目、特に気温が急激に上がるタイミングから注意が必要です。暑さに慣れていない時期が最もリスクが高まります。

Q:腎臓病の薬を飲んでいる猫にとって、夏はどう注意すべきですか?
A:脱水が腎臓に大きな負担をかけるため、水分を摂取させることが大切です。食事や水飲みの工夫をしながら、体調の変化を日々観察しましょう。

Q:心臓病の猫にエアコンは必要ですか?
A:はい、必要です。特にシニア猫は体温調節がうまくできないため、室温を一定に保つことが心臓への負担軽減に役立ちます。

Q:食欲がない時の対処法は?
ウェットフードやトッピング、スープなどを利用して食欲を刺激してみてください。それでも改善しない場合は、病気のサインである可能性が高いため、早めに動物病院へご相談ください。

 

まとめ


シニア猫にとって夏は暑さにより、命にかかわる大きなリスクを伴う季節です。夏バテは腎臓病や心臓病の悪化を招くきっかけになることがあるため、日頃から体調を注意深く観察し、少しの異変にも早く気づけるようにすることが大切です。

飼い主様の小さな気づきが、病気の早期発見につながります。さらに、温度や湿度の調整、水分補給の工夫、食事内容の見直しなど、ご家庭での取り組みによって多くの不調は予防することができます。

当院では、シニア猫の健康管理や持病との向き合い方について、それぞれに合わせた丁寧なサポートを行っております。「いつもと少し違う」と感じたときは、どうぞお気軽にご相談ください。

飼い主様と大切な愛猫が安心して夏を過ごせるよう、全力でお手伝いさせていただきます。

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