犬や猫の眼科疾患|シニア期に多い目のトラブルと予防法

シニアの犬や猫に目の異変が増えてきたと感じたことはありませんか?犬や猫も年齢を重ねると、人と同様に視力が低下したり、目の病気が進行しやすくなったりすることがあります。
シニア期になると、白内障や緑内障といった代表的な眼科疾患のリスクが高まります。視力が落ちることで移動しにくくなったり、環境への不安が増してストレスがたまったりと、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。
そこでおすすめしたいのが、「春の健康診断」です。春は気候も穏やかで体調を崩しにくいため、検査に最適な時期です。眼の異常は進行に気づきにくいことも多く、早期発見のためには定期的なチェックが欠かせません。
今回は、シニアの犬や猫に多い眼科疾患について、症状や春の健康診断で確認すべきポイント、日常生活でのケア方法、そしてすぐに受診が必要な症状などを詳しく解説します。
■目次
1.シニアの犬や猫に多い目の病気とその症状
2.春の健康診断で確認すべきチェックポイント
3.日常生活での目の健康管理方法
4.要注意!すぐに病院を受診すべき症状
5.まとめ
シニアの犬や猫に多い目の病気とその症状
シニア期になると、犬や猫の体にはさまざまな変化が起こりますが、特に注意したいのが目の病気です。代表的な眼科疾患は以下が挙げられます。
<白内障>
水晶体が白く濁ることで視界がぼやけ、進行すると視力が低下し、最終的には失明に至ることもある病気です。特にシニア犬に多く見られ、トイ・プードルや柴犬などがかかりやすい傾向にあります。
初期症状としては、目が白っぽく見える、光に対して反応が鈍くなるといった症状が見られます。
<緑内障>
眼圧の上昇により、視神経が圧迫されることで急激に視力が低下する病気です。放置すると失明のリスクもあるため注意が必要です。柴犬やビーグルなどの犬種に多く、猫では加齢とともに発症リスクが上がります。
目の充血や腫れ、痛がって目を閉じようとする様子が見られた場合は、すぐに獣医師に相談しましょう。
<角膜炎>
目の表面(角膜)が炎症を起こす角膜炎は、乾燥や異物の混入が原因になることが多いです。特に、目やにの増加、目をこする仕草、まぶしそうにするといった症状が見られるため、日頃から目の様子をチェックしましょう。
パグやペルシャ猫などの短頭種は角膜が傷つきやすく、角膜炎を起こしやすいので特に注意が必要です。
これらの目の病気は、初期段階で気づいて対処することが重要です。普段の様子の中で目の異変に早く気づけるように、日常的な観察が大切です。
春の健康診断で確認すべきチェックポイント
春の健康診断では、体全体のチェックに加えて、目の状態も診てもらうことができます。主に行われる眼科検査や飼い主様が事前にできる観察ポイントについては、以下の通りです。
<獣医師が行う主な眼科検査>
■スリットランプ検査
目の表面や水晶体の異常を確認する検査で、白内障や角膜炎の発見に役立ちます。
■眼圧測定
眼圧を測定し、緑内障の早期発見に有効です。
■眼底検査
網膜や視神経の状態をチェックする検査で、視力低下の原因を調べる際に重要です。
<飼い主様が事前に観察・記録しておくと良い症状>
・目の濁りや変色はないか
・目やにや涙の量が増えていないか
・頻繁に目をこする
・まばたきの回数が増えていないか
・暗い場所でつまずく、物にぶつかることがないか
これらの情報を事前に把握しておくことで、獣医師がより正確に状態を判断しやすくなります。
<定期検査の重要性>
シニアの犬や猫は目の疾患が進行しやすいため、特に異常が見られなくても年に1〜2回の眼科検査を受けることが推奨されます。
日常生活での目の健康管理方法
日々の暮らしの中でも、目の健康を守るためにできることはたくさんあります。以下のようなケアを習慣にすることで、病気の予防や進行の抑制につながります。
<目の周りを清潔に保つ>
目やには雑菌の繁殖を招くため、ぬるま湯で湿らせたコットンやガーゼで優しく拭き取りましょう。刺激にならないように、力を入れずそっと拭くのがポイントです。
<室内環境の整備>
目の乾燥を防ぐためには、室内の湿度を40〜60%に保つことが理想です。加湿器を使うなどして空気の乾燥を防ぎ、直射日光が当たりすぎないよう照明の明るさにも配慮しましょう。
<目に良い栄養を摂取する>
目の健康を保つために、以下の栄養素を含む食事やサプリメントを取り入れると良いでしょう。
・オメガ3脂肪酸:抗炎症作用があり、視力の維持をサポートします
・ルテイン:紫外線ダメージから目を保護します
・ビタミンA:目の粘膜を健康に保つ働きがあります
<ストレスを軽減する>
環境の変化や不安がストレスとなり、免疫力が低下することで目の健康にも悪影響を与えます。そのため、静かで落ち着いた空間を用意し、シニアの犬や猫が安心して過ごせるように配慮してあげましょう。
要注意!すぐに病院を受診すべき症状
以下のような症状が現れた場合には、速やかに動物病院を受診してください。目の病気は放置すると悪化し、二次疾患を引き起こす恐れもあるため、早期対応が大切です。
・目の充血が強く見られる(炎症や緑内障の可能性があります)
・目が腫れている、異常なふくらみがある(感染症や腫瘍が疑われます)
・目を開けられない、痛がる様子がある(角膜の損傷や炎症を起こしていることがあります)
・突然、物にぶつかるようになった(急激な視力低下や網膜疾患の可能性があります)
これらの症状は緊急性が高いため、夜間や休日でも受診可能な動物病院を事前に調べておくと安心です。
まとめ
シニアの犬や猫の目の健康は、生活の質に直結する重要な要素です。白内障や緑内障などの眼科疾患は、早期に発見して治療を始めることで、視力の維持や生活の快適さを保つことができます。特に春の健康診断は、体調が安定しやすく、検査のタイミングとしても非常に適しています。
日常のケアとしては、目の清潔を保ち、適切な湿度や明るさを維持した住環境を整えること、目に良い栄養を意識的に取り入れること、そしてストレスの少ない暮らしを提供することが大切です。
小さな変化にも敏感に気づき、愛犬や愛猫の目の健康を守るためにできることを、日々の暮らしの中で積み重ねていきましょう。
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