つるまき動物病院
院長ブログ

犬の嘔吐・下痢の救急対応|すぐに病院へ行くべき症状と応急処置を徹底解説

2025年2月25日

突然、愛犬が嘔吐や下痢をしたら、飼い主様は大きな不安を感じることでしょう。「このまま様子を見て大丈夫?」「すぐに病院に連れて行くべき?」と戸惑うのは当然です。特に夜間や休日など、すぐに動物病院へ行けない状況では、どのように対処すればよいのか悩んでしまいますよね。

今回は、犬の嘔吐・下痢に対する緊急度の判断基準や応急処置、そして夜間や休日を含む病院選びのポイントなどを詳しく解説します。

救急診療の実績をもとに獣医師が監修した内容ですので、信頼できる情報としてぜひ参考にしてください。事前の知識を持つことで、万が一のときも冷静に対応でき、愛犬の命を守ることにつながります。

■目次
1.すぐに救急病院を受診すべき危険なサイン
2.年齢や体格による症状の違い
3.嘔吐・下痢の原因と症状の見極め方
4.応急処置:病院に行くまでにできること
5.夜間・休日の救急受診について
6.予防と再発防止のために
7.まとめ:愛犬を守るための準備と心構え

すぐに救急病院を受診すべき危険なサイン


犬が嘔吐・下痢をしているとき、以下のような危険な症状が見られた場合は、ためらわずにすぐに救急病院を受診してください。これらは命に関わる緊急サインです。

<嘔吐物や便に血液が混じる(吐血・下血)>
吐瀉物や便に赤色または黒色(タール状)の血液が混じっている場合、胃腸の出血が考えられます。特に黒い便は消化管内での出血を示しており、放置すると命に関わるため早急な対応が必要です。

<元気がなくぐったりしている>
通常、犬は多少の体調不良でも飼い主様に甘える反応を示します。しかし、名前を呼んでも反応が鈍く、立ち上がれない、目がどんよりするなどの状態は非常に危険です。ショック状態や内臓の異常が疑われます。

<意識がもうろうとする>
目が焦点を結ばず、呼びかけや刺激に反応しない場合は脳や神経系の異常が考えられます。中毒や低血糖の可能性もあり、迅速な治療が必要です。

<脱水症状>
口の粘膜が乾燥し、皮膚をつまんでもすぐに戻らない(スキンテント現象)場合は、脱水が進行している証拠です。脱水は心臓や腎臓に負担をかけるため、速やかに治療を受ける必要があります。

<頻繁な嘔吐・下痢>
1日に何度も嘔吐や下痢を繰り返す場合は、急性胃腸炎や中毒症状が疑われます。特に小型犬や子犬は体力が低下しやすく、短時間で命に関わることがあります。

<呼吸が苦しそう(呼吸困難)>
口を大きく開けて荒い呼吸をしていたり、腹部を大きく動かして苦しそうにしていたりする場合は、重度のショックや胸腔内の異常(心臓疾患、肺炎など)の可能性があります。

年齢や体格による症状の違い


犬の体格や年齢によって、同じ症状でも緊急度が異なります。

<子犬・小型犬・中型犬の場合>
体が小さいため、少しの脱水や低血糖でも命に関わることがあります。特に頻回な下痢は、すぐに病院での補液が必要です。

<大型犬の場合>
胃捻転などの深刻な疾患を伴うことがあり、放置すると短時間で命を落とす危険があります。唾液を垂らして苦しそうにしていたら要注意です。

<高齢犬の場合>
免疫力が低下しているため、嘔吐や下痢が感染症や臓器不全の初期症状であることがあります。進行が早い場合があるため、早期受診が重要です。

嘔吐・下痢の原因と症状の見極め方


犬の嘔吐・下痢は、原因を特定することで適切な対応ができます。主な原因と、症状を観察するポイントを確認しておきましょう。

<食べすぎ>
消化不良を引き起こし、一時的な嘔吐につながります。

<異物摂取>
誤っておもちゃや骨などを飲み込んだ場合、腸閉塞を起こす可能性があります。

<ストレス>
引っ越しや環境の変化、家族構成の変化などが原因で胃腸の調子を崩すことがあります。

<感染症>
パルボウイルスやジステンパーなど、ウイルスや細菌による下痢は重症化する恐れがあります。

<食物アレルギー>
新しいフードやおやつが合わない場合、消化器症状として現れることがあります。

【症状の観察ポイント】
症状を詳しく観察することで、獣医師が迅速かつ正確に診断できます。以下のポイントを記録しておきましょう。

頻度:1日に何回吐いたか、下痢はどのくらいの間隔か
性状:嘔吐物や便の色、臭い、粘液や血液の有無
:嘔吐や下痢の量は多いか少ないか
タイミング:食後すぐか、夜間か、特定の行動後か

【自己判断が危険な場合】
特に以下のケースでは、飼い主様の判断で様子を見るのは危険です。

<高齢犬や持病がある場合>
症状が急激に悪化することがあります。

<1歳未満の子犬の場合>
免疫が弱いため、パルボウイルス感染などが命に関わります。

<24時間以上嘔吐・下痢が続く場合>
慢性的な脱水や電解質異常が起こります。

応急処置:病院に行くまでにできること


緊急時には、飼い主様が行う応急処置が愛犬の命を救うことがあります。ただし、誤った対応は悪化を招くこともあるため、以下を参考にしてください。

<絶食>
嘔吐が続く場合は、胃腸を休ませるために12〜24時間の絶食を行います。ただし、子犬や高齢犬は低血糖を起こすリスクがあるため、獣医師の指示を仰ぐことが重要です。

<水分補給>
嘔吐がひどい場合、一度に大量の水を与えるとさらに嘔吐を引き起こす可能性があります。少量ずつ頻繁に与えましょう。

【してはいけないケア】
市販の下痢止めや吐き気止めを独断で使用するのは危険です。また、人間用の薬は犬にとって有害なため、絶対に与えないでください。

【移動時の注意点】
キャリーケースを使用し、揺れを最小限に抑えましょう。車内は涼しく保ち、直射日光を避けます。

夜間・休日の救急受診について


夜間や休日は、通常の動物病院が閉まっていることが多いため、あらかじめ近くの救急病院を調べておきましょう

<救急病院を選ぶポイント>
・24時間対応かどうか
・専門医がいるか(特に内科・外科)

<受診時に伝えるべき情報>
以下を事前にメモしておくと診察がスムーズです。

・症状の開始時期とその後の経過
・嘔吐物や便の色、形状(写真があればなお良い)
・直近の食事内容や誤飲の可能性
・既往歴(持病や過去の治療歴)

<夜間診療の流れ>
まず電話で症状を伝え、受診の必要があるか確認します。その後、獣医師の指示に従い、病院へ向かいましょう。初診料や治療費は病院によって異なりますが、緊急対応の場合は、通常より高額になることがあるため、予め用意しておくと安心です。

予防と再発防止のために


嘔吐・下痢は再発を繰り返しやすいため、日常の管理が重要です。

<食事管理>
バランスの取れたフードを与え、食事は複数回に分けて与えます。新しいフードを与えるときは、少量ずつ数日かけて切り替えましょう。

<生活環境の整備>
清潔な環境を保ち、異物を誤飲しないように注意しましょう。また、ストレスを軽減するために、犬が安心して過ごせる場所を用意しましょう。

<定期的な健康診断>
年1〜2回の健康診断は、内臓疾患や腫瘍などの早期発見に役立ちます。特に高齢犬は血液検査やエコー検査を定期的に受けることをおすすめします。

<かかりつけ医を持つメリット>
普段から健康状態を把握してもらえるため、異常があれば早期発見できます。また、緊急時の対応や夜間診療の紹介など、スムーズな連携が期待できます。

まとめ:愛犬を守るための準備と心構え


犬の嘔吐・下痢はよくある症状ですが、時に命に関わる危険なサインを示すことがあります。緊急度を見極め、必要に応じて迅速に病院を受診することが大切です。また、応急処置や受診時に必要な情報を把握しておくことで、万が一の際にも冷静に対応できます。

飼い主様の適切な対応が、愛犬の命を救う大きな力となります。少しでも不安を感じたら、迷わず獣医師に相談することをおすすめします。日頃から準備を整え、愛犬との大切な時間を安心して過ごしましょう。

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