つるまき動物病院
院長ブログ

獣医師が教える犬の歯石予防 | 予防のコツから歯磨きの方法まで詳しく解説

2025年1月27日

愛犬が健康で長生きするためには、歯のケアが欠かせません。「歯石」と聞いて、そこまで深刻な問題ではないと思われる飼い主様もいらっしゃるかもしれません。

しかし、実は歯石はただの汚れではなく、放置すると深刻な健康問題を引き起こします。歯周病や口臭はもちろんのこと、歯周病菌が血流を通じて全身に広がると、内臓疾患の原因になる可能性もあります。そのため、日頃から歯石を予防し、適切なケアを行うことが非常に重要です。

今回は犬の歯石予防について、原因やケアの方法、獣医師に相談するタイミングなどを解説します。

■目次
1.なぜ犬の歯石予防が重要なの?
2.歯石ができるメカニズムと原因を理解しよう
3.自宅でできる歯石予防法:基本のケア方法
4.日々の生活における予防のコツ
5.獣医師に相談すべきタイミングと専門的なケア
6.まとめ:愛犬の健康な歯を守るために

なぜ犬の歯石予防が重要なの?


歯石は見た目の問題だけでなく、犬の健康に大きな影響を及ぼします。歯石が歯に付着すると、歯周病を引き起こしやすくなります。歯周病は歯茎や骨にダメージを与え、進行すると歯が抜け落ちてしまうこともあります。また、口腔内のトラブルが全身に影響を及ぼし、細菌が血液を通じて内臓に達することで、心臓や腎臓などの病気のリスクが高まるとされています。

さらに、歯石を放置すると口臭が悪化したり、歯茎の痛みが原因で食事が取れなくなったりすることもあります。これが続くと栄養不足に陥り、健康全般に悪影響を及ぼします。特に小型犬や高齢犬は歯石がつきやすいため、定期的なケアが必要です。

また、歯石予防をすることで、歯周病やそれに伴う健康トラブルを未然に防ぐだけでなく、愛犬の生活の質を向上させることができます。健康な歯を保つことは、愛犬が毎日美味しく食事を楽しみ、元気に過ごすために欠かせない要素です。

歯石ができるメカニズムと原因を理解しよう


歯石は、最初から突然現れるものではありません。その形成過程を知ることで、日々の予防ケアがどれほど重要かを理解することができます。

まず、食事後に歯の表面や隙間に残った食べかすを細菌が分解し、歯垢(しこう)が形成されます。この歯垢は非常に柔らかく、ブラッシングで簡単に取り除くことができますが、これを放置してしまうと唾液中のミネラルと結合して硬化し、歯石に変わってしまいます。一度歯石になると、通常の歯磨きでは取り除くことができなくなり、専門的なケアが必要になります。

歯石ができやすい要因には以下のようなものがあります。

<食事の内容>
ウェットフードを主食としている場合、歯垢が付きやすく、歯石になりやすい傾向があります。

<年齢>
唾液の分泌量が減少する高齢犬は、歯石がつきやすくなります。

<犬種>
トイ・プードルやチワワ、ミニチュアダックスフンドなど、小型犬は顎が小さく歯が密集しているため、歯石がたまりやすいです。

これらの要因のうち、食事内容は改善が可能です。ドライフードを主食に選ぶことで、ウェットフードよりも歯垢がつきにくくなるため、歯石の予防に役立ちます。

自宅でできる歯石予防法:基本のケア方法


犬では3〜5日で歯垢から歯石になるといわれているため、歯磨きを週に1〜2回することで、歯石に変わるのを防ぐことができます。

歯磨きトレーニングを始める際、初めはガーゼ、もしくは歯磨き用クロスを指に巻き、犬用の歯磨きジェルを使って歯磨きをしてみましょう。まずは1本だけ磨いてみて、上手にできたらたくさん褒めてあげます。慣れてきたら磨く歯の本数を徐々に増やしていき、最終的に歯ブラシで磨けるようにトレーニングを進めていきましょう。

犬用の歯ブラシはさまざまな種類があり、どれを選べばよいか迷う方が多いです。一般的に、歯ブラシには小型犬用から大型犬用までさまざまなサイズがあるため、ヘッドが愛犬の口の大きさに合ったものを選ぶと良いでしょう。歯磨きジェルは必須ではありませんが、犬用のものはフレーバーや味がついているため、歯磨きジェルを活用することで歯磨きに対する抵抗感を下げることができます。

日々の生活における予防のコツ


おやつやウェットフードは歯石がつきやすくなります。そのため、できるだけおやつは控え、主食はドライフードを選択しましょう。

また、日々の生活にデンタルケアアイテムを自然に取り入れる方法もお勧めです。おもちゃをデンタルケア用のものに変更する、おやつを歯磨きガムに変更する、飲み水に垂らすタイプの液体ハミガキを活用するなどして、日常的にデンタルケアを行うようにしましょう。

獣医師に相談すべきタイミングと専門的なケア


まずは歯が乳歯から永久歯に生え変わったタイミングで、定期検診を受けることをお勧めします。検診は3ヶ月に1回のペースが理想ですが、少なくとも半年に1回は検診を受けるようにしましょう。

定期検診で歯石がついていることがわかったら、歯周病に進行する前に予防的にスケーリングなどを行うことが大切です。病気でもないのに全身麻酔をかけることに抵抗がある方も多いですが、無麻酔スケーリングは歯の裏や奥歯の歯石までは取りきることができず、さらに誤嚥などの原因にもなるためお勧めできません。全身麻酔のリスクを極力少なくするためにスケーリングを行う前には必ず全身検査を行うため、不安がある場合は遠慮なくご相談ください。

すでに歯周病を引き起こしている場合はレントゲン検査などを行い、必要に応じてスケーリングや抜歯などを行います。

健康な歯が少なくなると食事がままならなくなり、健康維持に大きな影響を与えかねません。そのため、定期的に検診を受け、早期発見・早期治療に努めましょう。

シニア期の犬や猫の麻酔についてはこちらから

まとめ:愛犬の健康な歯を守るために


犬の歯石予防は、歯磨きや日常的なケアを通じて行うことができます。しかし、自宅でのケアだけでは限界があるため、獣医師による定期検診と専門的なケアを併用することが重要です。愛犬の健康を守るために、早期発見と早期治療を心がけ、継続的なケアを実践していきましょう。

愛犬の笑顔を守るために、ぜひ今日から歯の健康に目を向けてみてください。

東京都世田谷区の動物病院なら『つるまき動物病院』
診察についてはこちらから