つるまき動物病院
院長ブログ

シニア犬のリンパ腫について|早期発見と適切なケアがカギ

2024年9月11日

リンパ腫はリンパ球という白血球の1種が癌化して、腫瘍性に増殖する疾患です。この疾患は犬の腫瘍の中で24%と最も発生率が高く、特に7歳以上のシニア犬に多く見られます。そのため、リンパ腫はシニア犬において特に注意が必要です。

今回はシニア犬に見られるリンパ腫について、症状や治療方法、予防のための日常ケアなどをご紹介します。

■目次
1.シニア犬とリンパ腫の関係
2.リンパ腫の症状と早期発見のポイント
3.リンパ腫の診断方法
4.リンパ腫の治療方法
5.シニア犬に配慮した治療アプローチ
6.リンパ腫予防のための日常ケア
7.ご家庭での注意点
8.まとめ

シニア犬とリンパ腫の関係


リンパ腫の発生率は年齢が上がるにつれて増加する傾向があり、0〜10歳で0.3%、11歳で1.2%、12歳で1.5%とされています。そのため、7歳以上のシニア犬では特に注意が必要です。

リンパ腫の症状と早期発見のポイント


リンパ腫は、多中心型、消化器型、前縦隔型、皮膚型の4つに分類され、それぞれ症状が異なります。この中で犬に最も多く見られるのは多中心型で、症例の84%がこのタイプに該当します。

リンパ腫を引き起こすと以下のような症状が見られます。

・体表のリンパ節が腫れ、硬くコリコリする(特に下顎や首のリンパ節)
・食欲不振、体重減少
・嘔吐下痢 など

リンパ節の腫れ以外は特に目立った症状がなく、シニア犬によく見られるため、見逃されることが多いです。そのため、リンパ腫を早期発見するためには、定期的な健康診断が重要です。

リンパ腫の診断方法


リンパ腫の診断では、主に以下の検査を行います。

<血液検査>
全身の状態を把握するために検査を行います。リンパ腫の犬では、貧血や白血球の増加、高カルシウム血症などがよく見られます。また、リンパ腫が腎臓や肝臓に発生している場合、これらの臓器の数値に異常が現れることもあります。

<レントゲン・超音波検査>
画像診断を通じて、腫瘍の存在を直接確認できることがあります。また、この診断により、腫瘍の具体的な大きさを把握することも可能です。

<針生検と病理検査>
腫瘍に針を刺して採取した細胞や外科的に切除した腫瘍を病理検査に提出します。これにより、リンパ腫の詳細な分類や進行度(ステージ)を判定することができます。

リンパ腫の治療方法


<化学療法(抗がん剤)>
リンパ腫は全身性の疾患であるため、治療のメインは抗がん剤の投与となります。抗がん剤には多くの種類があり、さまざまな薬剤と投薬間隔を組み合わせたプロトコルがいくつも存在します。これらの中から最適なプロトコルを選ぶことは困難とされていましたが、近年では感受性試験により、効果の高い抗がん剤を選定できるようになりました。

<外科療法>
リンパ腫が全身に広がらず、特定の部位にのみ発生している場合は外科治療により、その部位を切除することが可能です。しかし、がん細胞は全身に存在するため、外科療法はあくまで補助的な治療となります。また、全身治療としては化学療法や放射線治療を行う必要があります。

ほかにも放射線療法などがあり、発生場所や状態を考慮して治療法を選択します。

シニア犬に配慮した治療アプローチ


シニア犬は若い犬に比べて基礎体力が低く、全身状態が悪化しやすくなります。特に食欲不振が続くと体力が落ちやすいため、食事が摂れない場合はリキッドタイプのごはんや経鼻カテーテルを利用して、強制給餌を行い、体力が落ちないようにケアしましょう。

リンパ腫予防のための日常ケア


リンパ腫は、全身に広がる前の段階で治療を始めることで、寿命を延ばすことが可能です。そのため、病気を引き起こさないためにも、動物病院で定期的に健康診断を受け、体に異常がないか確認してもらいましょう。また、獣医師と相談して適切な食事を選ぶ、十分な運動をさせる、環境ストレスを軽減させることも大切です。

ご家庭での注意点


シニア犬は、様子に変化が見られても「年のせい」と見過ごされがちですが、異変を感じたら早めに動物病院で診てもらうことが重要です。

病院に行った際には、不安に思っていることや気になることを、遠慮せずに獣医師に相談しましょう。診断では、犬の普段の様子や飼い主様が気にかけている点を獣医師が把握することで、診断の手掛かりになります。また、シニア期には何らかの病気が発生しやすいため、心の準備をしておくことが大切です。万が一の時には、ご家族とよく話し合い、冷静な判断ができるよう備えておきましょう。

まとめ


リンパ腫は特にシニア犬に多く見られる腫瘍で、早期発見・早期治療がカギとなります。病気を予防するためにも、定期的な健康診断と日常のケアが重要です。また、愛犬に異変を感じた際はすぐに獣医師に相談し、適切な治療を受けることが大切です。シニア犬の健康を守るためにも、日頃からの観察とケアを心がけましょう。

<参考文献>
Companion Animal Practice No.316
Veterinary Oncology volume 7 Number 4 Oct.2020 No.28

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