つるまき動物病院
院長ブログ

【季節別】管理ポイントを大公開|シニア猫の心筋症

2025年6月20日

最近、愛猫が「あまり動かなくなった」「季節の変わり目になると体調を崩しやすい」と感じたことはありませんか?それは、加齢による体調の変化と思われがちですが、実は心臓の病気が隠れている可能性があります。

シニア期に入った猫にとって、特に注意したい病気のひとつが「心筋症」です。この病気は初期症状が分かりにくく、季節の影響で症状が悪化することもあるため、飼い主様が早めに気づいて、適切な治療を受けることが大切です。

今回はシニア猫の心筋症について、基本的な知識から、季節別の症状や管理ポイント、ご自宅でのケア方法などを解説します。

■目次
1.心筋症とは?
2.心筋症の症状
3.専門的な検査と季節別の検診タイミング
4.心筋症の治療管理とご自宅ケア
5.動物病院に相談すべきタイミング
6.まとめ

心筋症とは?


心筋症とは、心臓の筋肉(心筋)が正常に動かなくなることで血液循環に支障をきたす病気です。特に7歳を過ぎたシニア猫で多く見られ、高齢になるほど発症リスクが高まります

心筋症には主に以下の3つのタイプがあります。

<肥大型心筋症>
心筋が分厚くなることで心室のスペースが狭くなり、血液を十分に送り出せなくなります。

猫の肥大型心筋症の診断や治療法についてより詳しく知りたい方はこちら

<拘束型心筋症>
心筋が硬くなり、心臓が拡張しづらくなることで血液が流れにくくなるタイプです。発症頻度はそれほど高くありませんが、進行が早い傾向にあります。

<拡張型心筋症>
心筋が薄く弱くなり、心臓の収縮力が低下してしまうタイプです。重症化しやすく、緊急の対応が必要になることがあります。

いずれのタイプも命に関わる重大な病気であり、早期に気づいて治療を始めることが、愛猫の命を守るうえで非常に重要です。

心筋症の症状


心筋症の症状は一見すると老化のサインと見分けがつきにくく、気づかないうちに進行していることが多くあります。特に注意したいのが、季節によって症状が変化する点です。

<夏の注意点>
夏は気温と湿度が高く、猫が体温調節をしづらくなります。それにより、心臓への負担が増し、呼吸が速くなる、口を開けて呼吸をするなどの呼吸困難の症状が見られることがあります。症状が悪化すると、ぐったりして動かなくなったり、息が荒くなったりすることがあります。

<冬の注意点>
冬は寒さによって血管が収縮し、血流が悪くなることで、心筋症の症状が悪化しやすくなります。じっとして動かない、震えている、食欲が落ちているといった異変が見られた場合は注意が必要です。

また、「あまり動かなくなった」「寝ている時間が増えた」「食欲が落ちてきた」など、年齢による変化と混同されやすい症状も、実は心筋症のサインであることがあります。そのため、日々の様子を丁寧に観察し、いつもと違う変化に気づくことが早期発見につながります。

専門的な検査と季節別の検診タイミング


心筋症を正確に診断するには、動物病院で以下のような検査を受けることが大切です。

・聴診による心音の確認
・レントゲン検査で心臓の大きさや肺の状態をチェック
・心エコー検査(超音波)による心筋の動きの評価
・心臓バイオマーカーを含む血液検査

また、心筋症に早く気づくためにも、季節の変わり目に健康診断を受けることが推奨されます。これらの時期は気温や湿度の変化が大きく、猫の体調が崩れやすいため、心筋症が悪化するリスクも高まります。

こうしたタイミングで予防的に検査を受けておくことで、病気の進行を早期にくい止められる可能性があります。

心筋症の治療管理とご自宅ケア


心筋症は完治が難しい病気ですが、適切な治療と管理によって症状を安定させることができます。治療は一般的に内服薬で、心拍のリズムを整えたり、血圧を調整したりする薬が処方されます。また、定期的な通院と検査を継続し、獣医師の指示に沿った治療を行うことが重要です。

さらに、日々の生活環境も症状の安定に大きく関係します。そのため、ご自宅では以下のようなケアを心がけてください。

<夏の場合>
エアコンを使って室温を一定に保ち、直射日光の当たらない涼しい場所を用意します。過度な湿度も避けるようにし、除湿器などを併用して快適な空間を作りましょう。

<冬の場合>
室温が下がりすぎないように暖房を使用し、ホットカーペットや猫用の保温マットなどで暖かさを保つ工夫をしましょう。ただし、急激な温度変化は心臓への負担になるため、温度設定は穏やかに保つことが大切です。

動物病院に相談すべきタイミング


愛猫に以下のような症状が見られた場合は、迷わずすぐに動物病院を受診してください。

・呼吸が急に荒くなる、口を開けて苦しそうに呼吸している
・舌や歯ぐきが紫がかった色をしている(チアノーゼ)
・急にぐったりして意識がもうろうとする
・後ろ足が動かなくなったり、冷たく感じたりする(血栓症の疑い)

これらは心筋症が重篤な状態まで進行している可能性があり、命に関わる緊急事態です。少しでも異常を感じたら、すぐに獣医師に相談することが大切です。

まとめ


シニア猫の心筋症は、初期症状がわかりにくく、気づかないうちに進行してしまうことがあります。重症化すると命に関わることもあるため、早期の発見と対応が大切です。また、季節の変わり目に体調を崩しやすくなるため、日々の様子を注意深く観察することで、小さな異変にも気づきやすくなります。さらに、定期的に健康診断を受けることも、病気の早期発見につながります。

当院では、猫の年齢や体調に合わせた検査やケアのご提案を行っております。気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

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