つるまき動物病院
院長ブログ

皮膚の肥満細胞腫について│日頃から愛犬の体をよく観察することが大切

2023年6月19日

肥満細胞腫は、肥満細胞という免疫系の細胞が腫瘍化し増殖する疾患です。聞きなれない病気かと思いますが、犬の皮膚腫瘍で最もよくみられ、全腫瘍の1/3を占める疾患です。
見た目や悪性度は様々で、病態によって治療法や予後が異なります。
今回は犬の肥満細胞腫とはどのような病気なのか、詳しく解説します。

目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.まとめ

原因


肥満細胞腫は特に原因やリスク因子がない特発性疾患です。
レトリーバー系、パグ、テリア系が好発犬種とされますが、他にも様々な犬種で発生します

症状


症状としては、皮膚や皮下にしこりができます。大きさや色は様々で典型的な見た目が存在しません。
肥満細胞は中にヒスタミンなどの炎症性物質を含むため、触れることでそれらが周囲に拡散し、紅斑(読み方:こうはん、皮膚の表面が赤くなった状態のこと)や膨疹(読み方:ぼうしん、皮膚がむくんでふくらんだ状態のこと)を生じることがあります
そのため、しこりを見つけてもあまりいじらずに、早めに動物病院を受診しましょう。

また、ヒスタミンの放出により胃潰瘍を続発させることがあり、そうなると嘔吐や黒色便、食欲不振などの症状がみられます。

診断方法


腫瘍内の細胞を細い針で採取し、顕微鏡で観察する細胞診で診断します。
肥満細胞腫は特徴的な細胞を持つため、診断は比較的容易です。
しかし、悪性度や正確なグレード(1~3に分類)の診断には、専門機関での病理診断が必要です。

また、肥満細胞腫はリンパ節や肝臓・脾臓に転移しやすいため、レントゲンやCT、超音波で他臓器への転移がないかも確認します。

治療方法


まずは外科的切除が最優先です。
手術で取り切れなかった場合は、以下の治療法を組み合わせて行います。

・ステロイド剤・抗ヒスタミン薬
肥満細胞の増殖や炎症性物質の放出を抑制することで腫瘍の縮小が望めますが、効果は弱いため、単独で用いることはあまりありません。

・分子標的薬
c-kitという過剰増殖の一因となっている遺伝子を攻撃する内服薬で、自宅で行える治療法です。主に使用される内服薬にはイマチニブ、トセラニブなどがあります。
ただ、c-kit遺伝子をもたない肥満細胞腫には効果がありません。

・放射線療法
X線を照射し、外科手術では取り切れなかった腫瘍細胞やアプローチができない箇所にある腫瘍細胞を攻撃します。何度か繰り返し行う必要があり、実施できる病院が限られます。

・抗がん剤
ビンブラスチン、ロムスチン(CCNU)などいくつかの薬剤を組み合わせ、投与します。抗がん剤治療は通常半日入院で行われます。
これらの治療に対する反応性や転移の早さ、予後はグレードにより異なってきます。
また、当院では上記の療法で症状が改善しない場合の選択肢として、再生医療にも取り組んでいます。再生医療について詳しく知りたい方は、当院の獣医師までお気軽にご相談ください。

再生医療についての詳細はこちらから

まとめ


肥満細胞腫は特発性の腫瘍疾患のため、残念ながら効果的な予防法はありません。
そのため、飼い主様が日頃から愛犬の体をよく観察し、しこりや赤みがないかを注意し、早期発見に努めましょう
治療法は、グレードや発生箇所、犬の性格によって組み合わせることができるので、愛犬に合った治療法を獣医師とよく相談するようにしてください。

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