つるまき動物病院
院長ブログ

犬や猫の乳腺腫瘍について│避妊手術で予防できる病気

2023年9月28日

乳腺腫瘍は、乳房の乳腺に発生する腫瘍です。
犬の乳腺腫瘍は、雌で最も発生が多い腫瘍で、特に高齢で未避妊の雌犬に多い傾向があります。
また猫の場合は、全ての腫瘍の中で3番目に多い腫瘍であり、そのほとんどが悪性といわれています。

今回は、犬や猫の乳腺腫瘍について解説します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防や飼い主が気を付けるべき点
6.まとめ

原因


乳腺腫瘍の明確な原因は分かっていませんが、発情前に避妊手術を行うことにより発生率が低くなることや、未避妊の雌犬では年齢が上がるにつれ発生率が多くなることから、性ホルモンが関わっていると考えられています。

犬において、初回発情前に避妊手術を行った場合の発生率は、未避妊の雌犬に比べ0.5%(その差200倍 )まで抑えられ、初回発情後で8%、2回以上の発情後では26%といわれています。

一方、猫では初回発情前に避妊手術を行った場合は9%、初回発情後で14%、2回以上の発情後では89%の発生率となることが分かっています。

そのため、犬も猫も乳腺腫瘍の発生リスクを下げるためには、早期の避妊手術が推奨されています。

症状


乳腺腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があります。
犬の乳腺腫瘍では良性と悪性が半々であるのに対し、猫では80%が悪性であるといわれています。

犬と猫の乳腺腫瘍の症状は、初期段階では無症状のことが多く、乳腺付近に腫瘤が確認できるだけの場合がほとんどです。さらに症状が進行すると、腫瘤は徐々に大きくなり、自壊(破裂)することで出血や痛みによる元気消失、食欲の低下が見られます。

また、乳腺腫瘍が悪性の場合には、リンパ節や臓器に転移し、死に至る場合もあります

診断方法


乳房に腫瘤を発見した場合、それが炎症でなく腫瘍か、また腫瘍でも乳腺腫瘍なのかを判断するために、細い注射針で腫瘤中の細胞を吸引して観察する細胞診を行います。

そこで乳腺腫瘍という診断がついた場合は、X線検査もしくはCT検査により肺などへの転移がないか確認します。
また、細胞診では腫瘍が良性か悪性か判断ができないため、確定診断には手術によって切除した乳腺組織の病理組織検査が必要です。

治療方法


乳腺腫瘍の最も効果的な治療方法は外科切除です。
その術式には、腫瘍のみを切除するものから、両側乳腺を広範囲に全摘出するものまであります。
犬の場合には、腫瘍の数や悪性度、ステージ、年齢や一般状態を考慮して術式を決定します。

一方、猫ではほとんどが悪性のため、腫瘍がある乳腺だけではなく、腫瘍が存在する側の乳腺の全摘出術(片側乳腺切除術)が推奨されます
もし、左右両側の乳腺に腫瘍がある場合には、術後の皮膚の張りがきつくならないよう、片側の乳腺の乳腺全摘出術行った1ヶ月後にもう片側の全摘出が行われます。

また、未避妊の雌では生殖器疾患や、乳腺腫瘍の抑制のため乳腺切除と同時に避妊手術もすすめられます

そして、乳腺摘出後には、悪性度や状態に応じて化学療法(抗がん剤治療)や再生医療を行うこともあります。

当院の再生医療についての解説はこちらのページをご覧ください

予防や飼い主が気を付けるべき点


愛犬や愛猫の乳房あたりを日頃からよく触り、しこりがないか確認するようにしましょう。
犬や猫の乳腺腫瘍は1歳未満での避妊手術で予防できる腫瘍のため、避妊手術を検討してみてください。当院では遅くとも3回目発情前までの避妊手術をおすすめしており、手術のタイミングは飼い主様とご相談の上決定しております。避妊手術に関してのご相談は当院までお気軽にご連絡ください。

まとめ


乳腺腫瘍は、発生率の高い腫瘍であり転移するケースも多く見られます。愛犬愛猫の乳房あたりに異常を感じた場合には、早めの受診をおすすめします。

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