つるまき動物病院
院長ブログ

犬と猫の急性腎不全について│命を救うためにも症状があれば早急な受診を!

2023年7月25日

急性腎不全とは、様々な原因により腎臓の機能が急激に低下し、尿が生成できなくなる疾患です。腎臓には血液中の老廃物の排泄や電解質の均衡を保つ働きがあり、これらが妨げられると命に関わる事態となります。
犬や猫で加齢により慢性腎不全を発症する子は多く、この場合基本的に完治は困難ですが、急性の場合は積極的治療により回復する可能性があります。今回は急性腎不全でみられる症状や、発症の予防のためにできることを解説します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防方法
6.まとめ

原因

大きく3つに分けられます。

・腎前性

腎臓への血流量が減少し、腎機能が障害された状態です。大量出血・脱水・麻酔への副反応・心臓病などが原因で起こります。

・腎性

腎臓への外傷(事故など)・腎毒性物質の摂取・細菌感染などが原因で腎臓が直接障害さ
れた状態です。腎毒性物質にはエチレングリコール(不凍液に含まれる)やアミノグリコシド系抗生物質、ユリ科の植物、ぶどうが挙げられます。細菌感染は特に犬でレプトスピラが問題になりますが、ワクチンでの予防が可能です。

・腎後性

尿管や膀胱、尿道など、尿の排出過程のどこかに障害があり、閉塞を起こすことで腎臓に負荷がかかっている状態です。特に猫では結石による閉塞が多いと言われています。

症状


元気消失、食欲の低下や嘔吐がみられ、尿量が著しく減少する、もしくは尿が全く出なくなることもあります
重症例では、虚脱(意識が喪失し、ぐったりする)や痙攣がみられることもあり、発症から数日で命を落としてしまうこともあります。

診断方法


血液検査を行い、BUN、CRE、リン、カルシウム、カリウムの値が上昇していないかどうかを確認します。

そして腎不全が急性か慢性か、原因は何かを鑑別するために、経過の聴取やエコー検査、尿検査、レントゲン検査を行います。

治療方法


急性腎不全は速やかに治療を行わないと命にかかわるケースもあるため、基本的に入院治療が必要となります。

具体的には、重度の脱水症状を起こしていることが多いため、輸液により電解質バランスを正し、腎血流量を増加させて、障害された腎臓が回復しやすい状態にします。

それに加え、昇圧剤や利尿剤を用いることもあります。原因物質が明確な場合は催吐や輸液、吸着剤などで除去します。

急性腎不全は速やかに治療を行うことで回復する可能性がある疾患ですが、命に別条がなかったとしても、慢性腎臓病に移行してしまう可能性があります

そのため、たとえ治療により元気になったとしても経過観察を行うことが重要です

予防方法


脱水や熱中症は急性腎不全の原因となるため、暑い夏の時期は特に朝や日没後の涼しい時間に散歩を行うようにし、こまめに水分補給をしましょう。腎毒性のある人用の薬(鎮痛剤、抗生剤)やユリ科植物、ぶどうをペットの届くところに置かないことも大切です。
急性腎不全の原因のひとつであるレプトスピラは8種または9種混合ワクチンで予防できるため、接種しておくと安心です。

愛犬愛猫の予防接種についてはこちらの記事でも解説しています

まとめ


急性腎不全は緊急性が高く、数日で命を落としてしまう危険性もある疾患ですが、少しでも早く治療を始めることで回復の可能性を上げられます。ペットの元気・食欲がないときや、何かを誤食した可能性があるときは、いち早く動物病院に連れていきましょう。

また、身近に腎毒性物質が存在しないか確認し、散歩中の拾い食いにも気を付けるようにしましょう。

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